柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『スクール・オブ・ナーシング』 こんな映画よりも看護師の薄給重労働の待遇改善をなんとかするほうが先じゃないんでしょうか…(柳下毅一郎)

 

スクール・オブ・ナーシング

監督 足立内仁章
原案 山崎かおる
脚本 児島秀樹、太田龍馬
撮影 三本木久城
音楽 丸山和範
出演 桐島ココ、大和田健介、佐伯日菜子、木村知幸、愛華みれ、吹石一恵、榎木孝明

 

Private Duty Nurses  face ついに出ました看護婦エクスプロイテーション!というと誰もが頭に浮かぶのは『あぶない看護婦』とかそういうロジャー・コーマン的なナース・エクスプロテーションでしょうが、この映画はそういうものではございません。看護師学校に働く生徒たちの青春模様を描く青春ドラマなのである。つまり看護師不足が叫ばれるおり、看護師養成にもっと力を注ぐべきだ。ついては映画だ……!と考えた人がいたらしく、熊本県人吉市の医療法人愛生会の全面協力を得て作られた看護師になろう映画。なので看護師志願者たちも男女年齢もバラエティに富んでおり、誰でも看護師にはなれるのだとアピール。看護師や看護学校の教師役には実際の看護師もエキストラ参加しているのではと思われる(授業が妙にうまく、演技が妙に棒読みだったりする)。まあそんないろいろから作者の善意は疑うべくもないのだが、こんな映画でどうこうなるくらいならそもそも看護師不足など起こりはしないわけで、薄給重労働の待遇改善をなんとかするほうが先じゃないんでしょうか…

 

 

主人公、木津川あかね(桐島ココ)は水族館が好きな子供だった。水族館で魚同士がどりなすドラマを想像するのが楽しかったのだ。だが、そんな少女はもっと面白いものを発見した。生と死のドラマが毎日展開している場所、つまり病院である……て母親が入院しているのでその見舞いに行ったついでだったらしいが、子供がふらふら歩きまわってあちこち覗きこんでる病院なんて嫌だよ!(ついでにそういう子供も嫌)まあ、そんなわけで人生を覗き見できる職業たる看護師になりたいと考えたあかねは高校卒業後、看護学校の門を叩いたのだった。同級生は地球防衛隊員になりたいと考えていたが、宇宙人がこないので人を救える仕事につきたいと大学を中退してきた脳天気な幸助(大和田健介)、リストラされた元居酒屋店長(木村智幸)、手に職をつけたいと考えたシングルマザー(佐伯日菜子)ら多士済々。すごいのは佐伯日菜子演じる元デパガのストーリーである。彼女はもともとデパートで化粧品売り場の店員だったのだが、後輩の娘と同僚の男を奪いあい、狙いをつけた相手をホテルに連れこんで(!)見事できちゃった婚にこぎつけたのはいいんだが、新婚早々男が後輩の娘と浮気しているのを発見、離婚して看護学校に入ったのだった……ってそれはどう考えてもデパートに復帰したほうがいいような……ともかくそんな感じでやたら無駄に美人でとうがたった看護師見習いが誕生してしまったわけだけど、佐伯日菜子がこんな映画でこんな役をやっているという圧倒的なわびしさ。唯一、男をうばいあうさいに後輩女を睨みつける目だけが殺気をはらんで佐伯日菜子健在だった。三白眼は生きている!

授業をこなした生徒たちは、ついに実習生として病棟に立つ。四人それぞれ四様の患者を割り当てられ、奮闘することになるのだが、これ、気になるのはやってるのが心のケアばかりであることだ。唯一佐伯日菜子だけは老婆の看護で体を拭いたり入浴させたり(愛生会が誇る自動入浴マシンが活躍する!)するのだが、ほぼこれ見てると実習生って患者の話相手なのかという感じ。心だけじゃなくて、体も治そうよ!

 

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