柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『太陽の蓋』 あまりにも『シン・ゴジラ』とそっくりすぎて笑った!違いはもちろん「人間ドラマ」 (柳下毅一郎)

 

太陽の蓋

監督 佐藤太
脚本 長谷川隆
撮影 小宮由紀夫
音楽 ミッキー吉野
出演 北村有起哉、袴田吉彦、中村ゆり、大西信満、神尾佑、青山草太、菅原大吉、三田村邦彦、菅田俊、菜葉菜、伊吹剛

 

face「史上最悪の危機」を迎えた日、官邸内で何が起きていたのか。当時の閣僚たちが実名で登場する究極のジャーナリスティック・エンターテインメント」……て何かと思ったら菅直人が実名で登場する311福島原発危機を描いたドキュメント・ドラマ。監督はX JAPANのHIDEのドキュメンタリーとか女子高生が戦国時代に行く映画とか作っていた人で、主演は「数々の映画・ドラマ・舞台で活躍し日本映画界では欠かせない存在で映画初主演の」(普通それはバイプレイヤーと言わないか?)「北村有起哉」ということで、まあキワモノだよな……と思っていたのだが、見てみると失礼ながら意外にもしっかりした作りで、予想外に面白かった。たぶん、見たのが少し遅くなってしまって、『シン・ゴジラ』のあとだったのもよかったのかもしれない。あまりにそっくりすぎて! いや、『シン・ゴジラ』の政府の動きが大震災時の菅直人内閣をモデルにしているというのはあきらかだろうが、テロップまで含め映画的描写もほぼ同じだった。ただしこちらには倒すべき敵もいないしカタルシスもないのだが……

 

 

2011年3月11日午後2時46分、宮城県沖を震源とする巨大地震が発生する。官邸には緊急対策本部が設置され、首相菅直人(三田村邦彦)、官房長官枝野幸男(菅原大吉)を筆頭に政府の要人は官邸地下の緊急対策本部に集結する。予想以上の被害に呆然とする中、福島第一原発から電源喪失により冷却停止の報が入る……官邸記者クラブにいた某新聞社政治部記者の鍋島(北村有起哉)は気脈を通じる官房副長官秘書官坂下(袴田吉彦)に取材をかけるが……

多くの登場人物が出てきて、みな黒い背広姿なので名前と肩書きがテロップで入る。歩いている姿に次々テロップが入り、彼らが巨大なスクリーンのある緊急対策本部に集まって……という演出まで含めて『シン・ゴジラ』と同じ過ぎて笑ってしまった。誰がやっても、ドキュメント風演出はほぼ同じようなことになってしまうのだろうか。違いはもちろん主人公の鍋島のような男が出てくるところで、そこが『シン・ゴジラ』からカットされた「人間ドラマ」である。だけど、この映画を見て「鍋島の妻(中村ゆり)の描写は要らない」と言う人はあまりいないだろう。鍋島の妻は、官邸に張り付いて戻ってこない夫に見捨てられ、テレビで悪化する一方の福島第一原発情勢を見るうち、幼い子供を育てることに不安を感じはじめる。ちなみに妹(菜葉菜)はアメリカ人と結婚しているので国外退避することになって、妻の不安はいや増す。

物語にはもうひとつ、福島で被災する一家が登場する。息子(郭智博)は「いちえふ」で働いており、非番であったにもかかわらず手伝いのために出かけてゆく。残された母の悲嘆。

だが、もちろん話のメインとなるのは官邸の福島第一原発事故対応についてである。全電源喪失の直後、電源車を届けるために奔走する危機管理対策本部。

「官邸がそんなことやんなくちゃいけないんですか?」
「しかたないだろ!」

 かたや「なにっ!」と電話で大声をあげて、周囲から注目される者がいる。

「電源車、重すぎて、自衛隊のヘリでも運べないそうです!」

 

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