柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『映画妖怪人間ベム』 -「飛び上がると月の前をよぎるカット」は法律で禁止して

『映画妖怪人間ベム』

監督 狩山俊輔
脚本 西田征史
撮影 迫信博
音楽 サキタハヂメ
出演 亀梨和也、杏、鈴木福、柄本明、中村橋之助、筒井道隆、観月ありさ

 

face夜闇に紛れて高くジャンプした奴が満月にかかってシルエットになる奴あるよね?

俗に“E.T.ショット”などとも呼ばれる、今ではアンブリンのロゴとして不滅の存在になったショットだが、そもそもあれって格好いいんだろうか? 正直に言って、『E.T.』のときですらすでにダサいものだったのではなかったか。

だがCGによるぴょんぴょんバッタ人間がスクリーンに跋扈するようになってからというもの、跳ねた先が月にかかるシーンの大安売り。見るたびに「それ、ダサイって!」と心の中で突っ込んでいるのだが、本作『映画妖怪人間ベム』ではポスターのデザインからすでに妖怪人間三人が巨大な月にかかっている絵柄。そしてマークは三人のシルエットが月面の上を飛んでいる姿。これはもう、嫌になるくらい飛びます。飛ぶは飛ぶは、そしてそのたびにつねに月は満月。つねに巨大な月の前でシルエット。もう「飛び上がると月の前をよぎるカット」は法律で禁止してほしい。そしたらこの映画は発禁ね!

さて、本作はもちろん60年代に放映された人気アニメ『妖怪人間ベム』の実写版である。

♪闇にかっくれ~て生きる、俺たちゃ妖怪人間なーのーさー のテーマソングでおなじみのあれ。これが2011年になってなぜかドラマ化され、日本テレビ系列で放映された。本作はその映画版である。なのでキャスト/スタッフはほぼドラマ版を踏襲している。物語的にもつながっているようなので、ほぼ続篇という格好になる。ドラマを楽しんでいた視聴者にとっては最高のボーナスとなるだろう。だが、もちろんいいことばかりではないわけで

1) アニメは見ているけれど実写ドラマにはとんと興味のない人間(オレだよ、オレ!)はどうすればいい?
2) そもそも、よくできたドラマであればそこで完結しているわけで、そのあとはただ蛇足でしか……
3) ていうか、テレビの続きなら、テレビでやればよくね?

物語はテレビ版の終わったところからはじまる。

ベム(亀梨くんが銀髪のカツラをかぶり、本人だけは渋いつもりの妙な声色を作って演じる)、ベラ(意外と悪くない)、ベロ(ウザイ子役)の三人は流れ流れて「あの街」へやってきた。三人はかつてこの街で誘拐犯に襲われた子供を救ったことがあった。だが人間たちは醜い妖怪人間を嫌って警官隊の一斉射撃をくらわした。三人はぴょーんと飛んで満月にかかって消えたのである。

なお、テレビ版では妖怪人間たちが戦うのは人間を悪に導く「緑のドロドロ」ことCGスライム。実はさる科学者の実験で生み出された妖怪人間たちは善しか持たない存在であり、それに対するスライムは純粋悪である。妖怪人間たちが人間になるためにはスライムと融合して悪を取り入れなければならない……ってキカイダーかよ! だが妖怪人間はそれを拒み、スライム(柄本明)を滅ぼして善のために戦いつづけることを選ぶ……ってやっぱり話終わってんじゃん!

じゃあどうなるかというと……

三人のやってきた街では、製薬会社の社員の連続不審死が続いていた。違和感を抱いた妖怪人間が捜査をはじめると、やがて謎の女(観月ありさ)の存在に気づく(一方、ベロは少女と出会い、ウザイ初恋ごっこを続けているのだが、ウザイのですべて省略)。謎の女は実は少女の死んだはずの母だった。交通事故で死んだのだが、夫(筒井道隆=問題の製薬会社の従業員)が持っていた「永遠に緑のままでいる葉っぱ」の汁をしぼって飲ませたら甦ったというのである。

ところで、その「永遠に緑のままでいる葉っぱ」ってのはなんなんだ?というしごく当然の疑問を妖怪人間が夫にたずねることを思いつくのはだいぶ先のことなのだが、それ以前に、夫はなぜその汁を絞って妻に飲ませる、などということを突然思いついたのだろうか? などと考えていてもしょうがないので説明すると、実はその夫(筒井)というのは妖怪人間たちがかつて誘拐犯から救った子供の成長した姿なのだった(妖怪人間は年をとらない)。実はそのときの誘拐犯は、緑スライムに乗っ取られて悪を働いていたのだった。彼が殺されたとき、緑スライムが地面にこぼれおち、枯れ草にかかるとその草は甦って緑の葉を広げた。以来、その葉は枯れることがないという。つまりその葉から絞られた緑スライム=悪のエキスが観月ありさの体内に入って彼女を甦らせ、同時に怪物に変えたのだ。

実は観月ありさが死んだ交通事故を仕組んだのは製薬会社の社長だった。自分が作った薬には重大な副作用があることに気づいた筒井道隆は社長(中村橋之助)にリコールを進言する。だが、「多くの命を救うためなら、少数の死はやむを得ない」と信じる橋之助社長はその事実を闇に葬るため、妻もろとも事故で筒井を殺そうとしたのである。すっかりいじけてしまった筒井は娘を愛でつつ引きこもっている一方で、甦った観月ありさは復讐のために関わった社員たちを殺していたのである。ついに最後のターゲット、社長の前にあらわれた観月ありさ。だがその前にベムが立ちふさがる「殺人はよくない……!」説得されて帰っていく観月。

じゃあ次は殺人者である社長をどうするのか?と思ったが、ベムも特に何をするでもなく「じゃあ……」と帰って行く。妖怪人間って、ひょっとして、馬鹿なんじゃね?

 

 

 

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