柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『今夜、ロマンス劇場で』 一介のグラドルが聖処女となる瞬間。この映画は後世、綾瀬はるかが小百合様化する決定的な一歩を踏み出した作品として語られることになるのかもしれない (柳下毅一郎)

公式サイトより

 

今夜、ロマンス劇場で

監督 武内英樹
脚本 宇山佳佑
音楽 住友紀人
出演 綾瀬はるか、坂口健太郎、本田翼、北村一輝、中尾明慶、石橋杏奈、柄本明、加藤剛

 

「どんな映画にもいいところはある」と坂口健太郎は言う。それはオレに言ってるのか……と思いながらもその文句は当然この映画にも適用されるわけで、じゃあこの映画のいいところってどこだろう? 綾瀬はるかの笑顔が病的に好きだという中毒患者以外に通じる良さがどこらへんにあるんだろうか……と思いながら見ていたんだが終盤に来て大逆転! 思いもかけない展開を見せて口あんぐりしながら見送ることになった。いや、さすがにこれは狂っている。綾瀬はるか、本当にヤバい。今からでも遅くないからさっさと脱ぐべきだ。それをしないと扉は閉ざされ、彼女はその向こうに永遠に閉じこめられることになるだろう。この映画は後世、綾瀬はるかが小百合様化する決定的な一歩を踏み出した作品として語られることになるのかもしれない。オレ、小百合様が小百合様になってしまった理由がわからなかったんだけど、同時代に小百合様化してゆく様子を見てようやく得心がいったよ。これこそ一介のグラドルが聖処女となる瞬間である。

 

 

さて、予告編を見れば誰でもわかるように、本編のストーリーは『ローマの休日』+『カイロの紫のバラ』という趣向である。天下のワーナー映画がここまで露骨にパクりな映画を作っていいのだろうか?と思いながら映画がはじまるとそこは病院。入院中の孤独な老人(加藤剛)が映画関係者で、自作の脚本もあると知ったアチャラカ看護師(石橋杏奈)は、その脚本の内容を教えてくれとせがむ。それは昭和三十五年のできごとだった……

京映映画(大映と日活を合わせたような感じか)撮影所で働く助監督牧野健司(坂口健太郎)は、自社の映画よりも戦前のマイナー映画『お転婆姫と三獣士』に夢中で、毎晩近所の映画館ロマンス劇場館主(柄本明!)に頼んで一本きりのプリントを上映してもらっている。「どんな映画にもいいところはある」健司は、この映画は「世界観はめちゃくちゃだがミュージカルナンバーはいい。それに何よりお姫様役の女優が素晴らしい」とすっかりお転婆姫(綾瀬はるか)に恋してしまっているのである。これ、お姫様の衣装がドレスで城の中は完全に西洋風なのに外に出ると狸、虎、ハトを従者にして大冒険とか特撮時代劇みたいなノリで、どういうつもりなのかさっぱりわからない。もともと綾瀬はるか自体一目惚れするような美女というよりはファニーフェイスという感じじゃないのか……というあたりはさておき。

 

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