柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『やっさだるマン』 広島県三原市発!地方映画にもいろいろ闇があるけど、こういう罪のないものがいちばんですね (柳下毅一郎)

公式サイトより

 

やっさだるマン

製作・監督・脚本・編集 大森研一
撮影 今井哲郎
音楽 中橋孝晃
出演 佐藤永典、須藤茉麻、竹達彩奈、宮川一朗太、野々村俊恵、清水美沙、目黒祐樹

 

face広島県三原市発! 監督は愛媛県宇和島市を舞台にした『海すずめ』を撮った大森研一。今度は海をわたって瀬戸内海の対岸に位置する広島県三原市の町おこし映画である。すっかり瀬戸内海のご当地映画監督の座を確固たるものにした感がある。本作は佐藤永典、須藤茉麻、竹達彩奈の三人が大森研一の監督デビュー作『ライトノベルの楽しい書き方』以来の共演ということで、気心知れたメンバーで楽しく同窓会、という感じか。別に予想外な展開は何も起きないのだが、丁寧に撮られたご当地映画で、何より三原市の人たちも楽しそうに参加しているのがいい。地方映画にもいろいろ闇があるけど、こういう罪のないものがいちばんですね。

 

 

さて、日本のどこにでもあるようななんの変哲もない市庁舎のドローン撮影から映画ははじまる。さっそく登場する「やっさだるマン」は三原市のゆるキャラである(TMみうらじゅん)。だるまをモチーフにしたゆるキャラだというのだが、キモい&地味の二重苦にあえぎ地元ですらほとんど知られていない。100位以内を目標に掲げて望んだゆるキャラグランプリだったが236位におわって傷心の帰還。中の人である市役所職員ハジメ(佐藤永典)は出会う人から「よう236位!」とからかわれて凹むばかり。「あれはだるマンのほうで、オレが悪いんじゃない!」と酒を飲みながら愚痴る日々だ。だるマンの介添をするサトミ(須藤茉麻)は「同級生コンビ」と呼ばれるサバサバ系女子。やっさだるマン課の課長(清水美砂)は来年こそ100位以内、いや10位を目標にしろとハッパをかけてくるのでますます憂鬱だ。

そんなある日、やっさだるマン課に新人がやってくる。アニメ声のかわい子ちゃんユウナ(竹達彩奈)だ。なんと「だるマンいいですよね!(ハート)」というだるマン推しギャル、彼女に一目惚れしたハジメも鼻高々だ。ユウナは映像記録助手として働くが、もちまえの感の良さですぐに独り立ちする。一方、だるマンの人気を高めるアイデアを求められたハジメ、ユウナにいいところを見せたいと出したアイデアが……「歌って踊れるだるマン」

 

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