柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『恐竜の詩』 山善発、まさかのジェネリック家電映画で町おこし!映画の流れを完全無視したインフォマーシャルの二時間十七分 (柳下毅一郎)

公式サイトより

恐竜の詩

監督・脚本 近兼拓史
撮影 畠岡英隆、近兼拓史
主題歌ワタナベフラワー、Permanent Fish
出演 とみずみほ、澤田敏行、古和咲紀、サニー・フランシス、芳野友美、永津真奈、近田球丸、小板橋みすず

 

face 山善発ジェネリック映画第三弾! まさかまさかである。ジェネリック家電映画『たこやきの詩』にも驚いたのだが、まさかそれがヒットしてシリーズ化していようとは。シリーズ第三弾は兵庫県丹波市発でさらにまさかの町おこし映画である。ジェネリック家電で町おこし! この映画を建設中から話題だった吉祥寺ココマルシアター(ココロを・動かす・映画館○)で見てきたのであった……

 

 

父の転勤で引っ越しばかりの澤田花梨(古和咲紀)はインドから呼び戻され、母みほ(とみずみほ)、父(澤田敏行)、弟鈴音(近田球丸)とともに兵庫県の田舎丹波市に引っ越してきた。丹波市というのは二〇〇四年に氷上町、柏原町など六つの町が合併して生まれた町で……そうですおなじみ「平成の大合併」案件です! なんでインドなの? と思ったんだが、実はシリーズ第二作『切り子の詩』でインドに行くとか行かないとかいう話になるかららしい。え、これストーリーつながってるの? まさか第二作でシングルマザーのとみずみほが再婚したわけ?と思ったらそうではなくて、第二作では澤田敏行が夫として登場したが花梨は出てこないで息子と三人家族。満を持しての第四作で家族全員そろうというなにやらパラレルワールドのような微妙な関係性で物語が進行しているのだった。そして、その理由は? というところで話は総合商社“山河”本社へ。

「BCP、つまりBusiness Continuty Planの策定です」
「そうかつまり自然災害など潜在化している脅威による損失と影響を事前(平常時)に分析し、その結果に応じた対策の検討と導入を行うわけだな」
「そうです常務、今後はBCP対策を切り口とした商品群の提案・調達支援をおこなっていきたいと思っています」

 てな調子でBCP対策について延々と語り続ける映画。なんでこんなことやってるかって、それはもちろん山善がBCPに注力しているからですね。この映画、山善を筆頭に協力会社がいくつもあるのだが、その協力会社が出てくるところは映画の流れを完全無視してインフォマーシャルになってしまう。そうしたインフォマーシャルの数珠つなぎというきわめていびつな構成のインフォマーシャル映画なのだ。家をリニューアルするとなれば浄化槽の設置について講釈を垂れ、ひかみ牛乳が出てくれば乳搾りから飲み終えた牛乳パックを洗って回収するところまでをワタナベフラワーの『牛乳の詩』に乗せて描いてみせる。そりゃあ映画も長くなろうというものだ。

 

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