『チャットレディのキセキ』ブラックな香りしかしないチャットレディ映画。おそらくは何も考えていないまま映画は終わった (柳下毅一郎)
→公式サイトより
製作 大橋孝史
監督・編集 川口浩史
脚本 印東由紀子、大竹菜々子
脚本監修 村川康敏
撮影 小林茂浩
音楽 桜庭英伯
出演 吉川友、鈴木裕樹、綱島恵里香、優希美月、宮下順子
「違う時間を生きる二人。彼らを繋ぐのはチャットだけだった…」というわけで『CH@TZONE』に引き続きのチャットレディ映画。今回ももちろんプロデュースはあの大橋孝史、実在の2ショットチャットであるライブデゴーゴーが実名でそのまま登場するPR映画ということでブラックな香りしかしない本作である。こういうのにかかわるのってどういう人なのかなあ……とどうしても思ってしまう。ヒロインの吉川友は元ハロプロの研修生、鈴木裕樹はナベプロの男性俳優集団D-BOYSのメンバーである。監督は芥川龍之介原作、尾野真千子主演の『トロッコ』を撮った川口浩史。そんで、中身はといえばほぼこの二人が2ショットチャットしてるだけなんだけどさ……
音大でピアノを学ぶ苦学生結城美音(吉川友)は学費稼ぎのために秋葉原のチャットルームでチャットレディのアルバイトをしている。だが、そのバイトのせいでボーイフレンドには振られてしまい、彼の新恋人である後輩からは「もう先輩に電話しないでください! チャットみたいないかがわしいバイトして、先輩は心いためてたんですよ!」と煽られる始末。重い気持ちでバイトに行くと、ログインしてきたのは「カノン」というハンドルネームの男である。美音は小型のキーボードを持ち込んで「なんでも弾きますよ!」などと音大生を売り物にしたぬるいチャットをしている。
「音楽お好きなんですか? わたしも『パッヘルベルのカノン』大好きです!」
だが音楽の話でもりあがるかと思いきや、カノンはチャットレディへの侮蔑むきだしで
「そうやってチャラチャラ弾いて金をかせぐのか? 音楽を売り物にしやがって」
「なんでですか! わたしだって真面目にやってるんです!」
カノンはいきなり無言でショパンの『幻想即興曲』を弾きはじめる。その見事な演奏に思わず聞き惚れる美音。カノンは実は世界的ピアニスト、藤木源(鈴木裕樹)であった。事情があって引きこもりの彼を心配したマネージャーが、チャットサイトに勝手に登録したうえ「うちの関連会社だから無料でチャットできるわよ」とセッティングまでしてくれるというあまりにご都合主義な設定で……
翌日、再度ログインしてきたカノンを待ちかえまえていた美音。
「わたしにレッスンしてください! わたし、クラシックのコンクールで一次審査は通ったんだけど、次が……課題曲がショパンの『幻想即興曲』なんですよ! これもう運命じゃないですか?」
「断る。だいたいこれはユーザーが金を払ってログインするんだろう? きみはオレに金を払わせてレッスンまでさせようというのか?」
と正論すぎるツッコミのカノン。だが
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