柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『single mom 優しい家族。 a sweet family』なんでおまえは国会議員になっただけで映画を作れると思ったんだ? 監督・脚本・編集は元衆議院議員。祖父はマツモトキヨシグループの創業者!

公式サイトより

single mom 優しい家族。 a sweet family

監督・脚本・編集 松本和巳
出演 内山理名、長谷川葉音、西川可奈子、森川真帆、岡元あつこ、石野真子、木村祐一

 

 

来ました! 姫井由美子元参議院議員製作総指揮の『コンビニ夢物語』にひきつづき、「オレは何本政治映画見たって政治家になれるなんて思わないのに、なんでおまえは国会議員になっただけで映画を作れると思ったんだ?」シリーズ第二弾! 監督・脚本・編集をつとめる松本和巳は元衆議院議員(郵政選挙で当選した“小泉チルドレン”だったが公選法違反により翌年辞職)。しかもただの議員ではなく父親も衆議院議員の二世議員、祖父はマツモトキヨシグループの創業者! で、なんの因果か知らないが出身地でもなんでもない北海道はニセコ町を舞台にシングルマザーについての映画を作ったわけである。インバウンド需要最大の勝ち組と言われるニセコ、金も知名度もあるだろうしこんなのにかかわる必要もなかろうと思うのだが、まあ世の中には余人にはあずかりしれない理由があるのだろう。まあそれにしてもこの人の映画の作れなさ加減と言ったら驚くべきもので、何かと言うと無意味にドローン撮影された美しいニセコの風景がはさまるぐらいはごく当たり前。冒頭、子供の姿→ニセコ山→歩いてくる二人の女というモンタージュにピアノ曲が重なって、これが「子供を保護するためにやってきた児童相談所員」を表現しているとはお釈迦様でも気がつくめえ。そういうわけでそれは一九九九年、マナミ十五歳のときの母子の言い争いである。マナミ、能面のように無表情で母から何を入れても石のように返事をしない強情な娘で、まあことここにいたるまでの育て方にも問題はあったんでしょうが、ここまで頑なだとな……それから十八年後、空マナミ(内山理名)は三十三歳のシングルマザーになっていた。親子二代のシングルマザーなのだが、娘エミリー(長谷川葉音)にひたすら甘えるばかりのママで

「ねえエミリー、今日ね、賞状もらってる人みちゃった。マミーも欲しくなっちゃった。もらったことないんだもん」

 何を言ってるんだか(これ当然映画の最後にはエミリーから表彰状をもらって大感動になるんだよね……)。町役場に行って相談すると、町職員から

「生活保護受けるしかないですね!」
「いやでもそれは……」
「だってあなた働いてもいないでしょ!」

 なぜか役所の方が生活保護を押しつけてマナミが嫌がるという展開。なぜマナミが嫌がっているのかよくわからないのだが、やはり世間体とかそういうことなんでしょうか。しかしその割にはとりたてて仕事をするでもなく、「がんばって」と言われたら「わたしだってがんばってんのに!」と逆ギレする。ひたすら周囲に(娘にまで!)甘えるだけで、自分では何ひとつしないのである。スーパーで特売の唐揚げを一パックだけ買うとか、エミリーにねこまんまを出して

「ねこまんまだよ。美味しいね~」

 と甘えるなど容赦のない貧乏描写が続く。だからさっさと生活保護受けようよ! 空腹に耐えかねたエミリー、ふらふら歩いてるうちに家に引きこもってミニカーを作っている鉄二(木村祐一)のところに転がりこんで、おにぎりを食べさせてもらったりしている(もちろん母には内緒)。クレジット上は「ミニカー職人」ということになっている鉄二だが、どう見てもただの引きこもりのミニカーオタク。他にもいろいろ謎の描写があって、どうにも正体のつかみにくい人物である。

 

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