柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『あまのがわ』 世界遺産屋久島で、少女と「分身ロボット」との出会い。けどそれ、LINEトークでよくね?

あまのがわ

監督・脚本・原作 古新舜
撮影監督 陣ヶ尾達也
音楽 田井モトヨシ
出演 福地桃子、柳喬之、吉満寛人、マツモトクラブ、住岡梨奈、生田智子、杉本彩、水野久美、野村佑香、西田聖志郎

 

「これは、心をなくした高校生のわたしがそれを取り戻すまでの話です」

 監督・脚本古新舜、って普通は知らないでしょうが、ぼくは知っている。ドラマ&ドキュメンタリーのコンビネーション映画という謎の試み『ノー・ヴォイス』を作った元ひきこもりで予備校教師な映画監督である。その彼が分身ロボットOriHime と出会ったことでコラボして生まれたのがこの映画。分身ロボットOriHime、人形で、遠くの人とコミュニケーションできるというものなのだが、それ、LINEトークでよくね? まあスマホ使えない人もこれさえあればと言いたいのかもしれないが、失礼ながら麗々しく開発するほどのものとも思えず、それを映画にするとなるとさらに謎なのだったのだが、映画は無事完成し東京国際映画祭にまで出品された。舞台は世界遺産屋久島ということで立派な地方映画の誕生である。

 

 

史織(福地桃子)は渋谷の高校に通う高校二年生。AIの研究者である母(生田智子)と二人暮らしだが、研究に忙しく家をあけてばかりなのに勉強しろと口うるさく束縛したがる母とは折り合いがよろしくない。ある日学校から帰ろうとしたときに体育館から太鼓の響きが聞こえてくる。渋谷・鹿児島おはら祭りで和太鼓パフォーマンスをするグループが高校を借りて練習していたのである。小学校まで鹿児島に住み、祖母(水野久美)から和太鼓を教わっていた史織、音につられてふらふらと体育館に近づくと、「ちょっとやってみない?」と誘われ見事な演奏を披露、「一緒にやろうよ!」と言われて舞い上がる。

だが、その姿を見ていた母親からは

「太鼓なんて遊びに過ぎません。社会の役に立つ大人になってくれないと!」

 と太鼓もおはら祭りへの出演も禁じられてしまう。

「わたしはお母さんのロボットじゃない!」

「どうして大人は自分勝手なの?」とそのまま泣き疲れて寝てしまった史織だが、そのあいだに大事件。実は中学からの親友、雪葉が学校でイジメを受けており、たまたま史織にSOSを送ってきたのに、それを無視することになってしまったのだ。結果彼女は自殺してしまう! 史織はショックのあまり不登校になり、そのまま夏休みのあいだずっと引きこもり。二学期になっても登校しない。

「先生から電話があったわよ。お母さん今日は出かけるけど、ちゃんと学校行くのよ!」

 と閉じたドアのこっちから声かけるだけの母親にすべての問題がある気がしてならぬ。ところがそこに祖母の入院の知らせがある。あわてて鹿児島の病院に飛ぶ母、なぜか史織も連れていく。階段から落ちて骨折した祖母は意外と元気で、史織の死んだ目を見て何かを察する。

「太鼓は続けてるのかい……太鼓にはね、人の心をつなぐ力があるんだよ。そうだ、おばあちゃん、小学生に太鼓の模範演技を見せる予定だったけど、入院でできんようになったからかわりに行ってくれんね」

「そんな暇ないでしょ、学校行きなさい!」とヒステリックな母に無言で反抗の史織、一人屋久島に向かう。ところが屋久島・種子島行き高速船の船中、隣に座っていた杉本彩が慌てて降りる際に買い物袋を取り違える事件が発生、彼女が持っていたOriHimeが史織のもとに転がりこんでしまう。祖母の友人である医師天野(吉満寛人)のところに世話になった史織、知らないまま持ち帰ってしまったOriHimeのスイッチを入れてみる。すると電源が入ってロボットが喋りはじめるではないか

 

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