柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲』 ラピュタ阿佐ヶ谷館主が監督の反原発映画。アニメのレベルは高く、実写も有名キャスト。なかなか見せるシーンもあって、じゃあストーリーはと言うと・・・

公式サイトより

  ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲

 

監督・脚本・原案 才谷遼
撮影 高橋義仁
音楽 江口貴勅
アニメーション制作 眞賀里文子、伊藤有壱、野中和隆、石田卓也、才田俊次、ユリア・ラディツカヤ、古川タク、地場賢太郎、ユーリー・ノルシュテイン、久里洋二
トキ・キャラクターデザイン のん
出演 隆大介、寺田農、デコウトミリ、宝田明、慶徳優菜、柳沢なな、関口晴雄、伊嵜充則、飯田孝男、原知佐子、桜井浩子、外波山文明、山谷初男、柳澤愼一、坂本頼光

 

face原作阿部和重……ではない。そうではなくて、トキ・キャラクターデザイン「のん」である。これだけでもかなりびっくりなのだが、見るとさらに驚きが溢れでてとまらない本作はラピュタ阿佐ヶ谷館主にしてふゅーじょん・ぷろだくと社長才谷遼が監督・脚本・原案をつとめる3A映画『セシウムと少女』 に続く監督第二作。もちろん反原発映画である。そしてアニメーションは前作にも増して豪華。ユーリー・ノルシュテイン、石田卓也、古川タク、才田俊次……樋口真嗣が絵コンテを描いて眞賀里文子が動かした大蛸による福島第一原発破壊シーンは怪獣映画的魅力が炸裂するし、伊藤有壱&I.TOONの骸骨兵士は、レイ・ハリーハウゼンへのオマージュというだけあって本編中でももっとも愉快な「視覚へのキャンディ」であった。そういうわけでアニメーションのレベルは前作にも増して高く、さらに実写のほうもあっと驚く有名キャストが並んでおり、なかなか見せるシーンもあって、じゃあストーリーはと言うと、これが……描きたいことがわからないとかそういうことではない。テーマははっきりしているしよくわかる。なんせ最後に隆大介が絶叫する。「やはり間違っている。誰も責任を取らないなんて。原発は要らない!」 まあその結論はいいのだが、そこにいたるまでの過程があるかというと、特にない! なんというか、個々のシーンが本当にバラバラで、まったくつながっておらず、脈絡もなく話は飛ぶし、ほぼ思いつきで目の前にあることを撮っていったら映画ができあがった……ようにしか見えないのだ。だからこの映画、説明が本当に難しい。どのシーンも必要ないといえばないし、あるといえばあるし。おもしろいとかつまらないとか完成度が高いとか低いとかそういうのを超えたところで成立してしまっているのだった。

 

 

会津若松市役所勤務の楠穀平(隆大介)は息子の嫁であるハルカ(デコウトミリ)と娘ウミ(慶徳優菜)と三人で静かな暮らしを送っている。ある日、穀平は原発事故最前線である福島県楢“穂”町特別震災広報課への応援勤務を命じられ、単身楢穂町に向かうことになる。ハルカは会津の小児科病院につとめているのだが、そこにいる少年ユウくんがイマジナリー・フレンドの女の子と話しているのが少々気になっている。少女“ミドリ”ちゃん、何やらものを動かしたりするようにも見え、本当にイマジナリー・フレンドなのか、幽霊なのか(震災の亡霊なのか)あやふやなままである。楢穂町に着いた穀平は、助役の村井(寺田農)から一癖も二癖もある特別震災広報課の面々に紹介される。そのまま村井に案内され、八年たった被災地の現状を見学するのである。

……で、映画としての中身は驚くなかれ、ほぼこれですべてである。被災地と原発事故による汚染区域の現在がセミドキュメンタリーで描かれ、その合間にハルカと病院での出来事、豪華なアニメーションが脈絡もなく挟まる。そのうちに徐々に過去の出来事があかされていくという仕組みである。

 

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