柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『君は月夜に光り輝く』死期が近づくと体から光をはなつ発光病という奇病にかかった少女と、その同級生とのラブストーリー・・・なのだが、あまり光ってなかった

公式サイトより

  『君は月夜に光り輝く』

監督・脚本 月川翔
原作 佐野徹夜
撮影 柳田裕男
音楽 伊藤ゴロー
主題歌 SEKAI NO OWARI
出演 永野芽郁、北村匠海、甲斐翔真、松本穂香、今田美桜、優香、生田智子、長谷川京子、及川光博

 

face あまり光ってなかった……

……というのもこの話、死期が近づくと体から光をはなつ発光病という奇病にかかった少女と、その同級生とのラブストーリーなのだが、そう聞くとそれはもうキラキラに輝きながら死んでいくのだろうと思うところ。いやそれ真面目に撮ったらコメディになってしまうんじゃないかというツッコミが当然入るわけだが、ここはもう盛大に輝かせてキッチュの華となってくれなければならない。残念ながら実際には光るのは二回ばかり。それもスポットを当ててるような光り方で、内から光があふれだすようにはならず、ごくおとなしく(しょぼしょぼで)、あの世からの神々しい光がスクリーンのこちら側に届くような事件は起きなかった。監督は青空映画の巨匠月川翔だが、荒唐無稽な原作を無難にリアルにまとめることに腐心していた模様。だけどこんな話にリアルなんてかけらもないんだからね! 光がなんのメタファーなのかも最後までわからなかったが、どうやら作り手たちもそこは考えずじまいだったようである。

 

 

高校二年生の岡田卓也(北村匠海)は、新学期がはじまっても登校してこない同級生渡良瀬まみず(永野芽郁)へのクラスの寄せ書きを届ける役目を押し付けられ、しぶしぶ病院に出かける。

「わたしね、余命ゼロなの」というみすず。「一年前に余命一年って言われて、それから一年たったから」と言われてもとくになんの感慨もない卓也だったが、「押しつけられてイヤイヤ来たのね」と図星をつかれて「そんなことない。自分の意志だ」と虚勢をはったもんで再訪するはめになり、そのときにまみずが大事にしていた(離婚した父親の手作り)スノードーム型オルゴールを壊してしまう。お詫びになんでもする、と言う卓也に、まみずは

「病室に縛りつけられて出られない自分のかわりに、自分のやりたいことを代行してほしい」

 と命じる。というわけで卓也はしぶしぶまみずの「しのこしたことノート」にしたがって、遊園地でローラーコースターに乗ったりパフェを食べたりして、その感想をまみずに報告する羽目になる。

という話なんだけど、この「何事にも消極的で後ろ向きな冷笑型人間が死を目前にしながら明るく前向きな少女に振りまわされるうちに生きる目的を見つける」ってストーリー、『君の膵臓を食べたい』とかとまったく同じで、現代ラノベのひとつの類型であるのかもしれない。だが、これに対しては強く言っておきたい。難病の美少女は、おまえのために苦しんでるんじゃないんだよ! 死を何かと交換するたぐいのストーリーには退廃しか感じないのである。

 

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