柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『あの町の高い煙突』 日立銅鉱山の煙害に苦しむ農民たちの公害映画・・・だが、特別協賛にはずらりと並ぶ日立グループ各社の名前が

公式サイトより

 『あの町の高い煙突

監督 松村克弥
脚本 渡辺善則、松村克弥
原作 新田次郎
撮影 辻智彦
音楽 小野川浩幸
出演 井手麻渡、渡辺大、小島梨里杏、吉川晃司、仲代達矢、大和田伸也、小林綾子、渡辺裕之、六平直政、伊嵜充則、石井正則、螢雪次朗、斎藤洋介、遠山景織子、篠原篤、阿川佐和子

 

face 和製スプラッターの旗手から茨城の地方映画監督へと華麗な転身を遂げた松村克弥監督の新作は茨城県日立市が舞台、日立銅鉱山の精錬工場から出る煙害に苦しむ農民たちと、その煙害を食い止めるために戦った人たちの物語……ということで松村監督の作家性からして、黄色いガスに襲われた農民たちが次々に血反吐を吐いてぶっ倒れもがき苦しむスプラッター展開が予想されるのだが、あにはからんや映画は農村のセットも作り、CGも大胆に使って時代を表現する骨太の映画作りで、えらい金あるな~と思っていたら、特別協賛でずらりと並ぶ日立グループ各社の名前! 日立からお金もらって日立を悪者にする映画も作れないだろう、というわけで「住民と共存共栄をめざす」「高潔な志をもった」日立鉱山の経営者(なんと吉川晃司が演じている!)を称えるあまり盛り上がらない公害映画になってしまったのだった。

 

 

時は明治43年。関根三郎(井出麻渡)は茨城県久慈郡入四間(いりしけん)の庄屋の孫息子。一高を受験し、将来は外交官を目指す若者だったが、祖父(仲代達矢)が倒れたのを機に、日立鉱山の銅製錬所から出る黄色い煙とその煙害に目を向ける。精錬過程で発生する亜硫酸ガスが周囲の畑に悪影響を与え、作物にダメージを与えているというのである。三郎は進学を諦めて青年会の委員長に就任、日立鉱山との補償交渉に当たることを決める。「冷静に、合理的に」を合言葉に、まずは煙害の状況把握と高価なカメラを購入する。カメラを持ってまわるので発電所長や補償担当の加屋淳平(渡辺大)らとも顔を合わせることになる。「補償のためなら会社をつぶしてもいい、と久原(社長)は考えています」と断言する加屋に

「銅の造反は国策、社長でも重役でもないあなたが軽々しく“会社を潰しても”なんて言うのは、わたしを無学な田舎者だからとなめてるんでしょう。不愉快です!」

 

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