柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『駅までの道を教えて』 原作 伊集院静。場内はシニア層で満員であったが、彼らははたしてこの地獄のようなストーリーに満足したのだろうか

公式サイトより

駅までの道を教えて

監督・脚本 橋本直樹
原作 伊集院静
撮影 蔦井孝洋
音楽 原摩利彦
主題歌 コトリンゴ
出演 新津ちせ、笈田ヨシ、有村架純、坂井真紀、滝藤賢一、羽田美智子、マキタスポーツ、佐藤優太郎、柄本明、余貴美子、市毛良枝、塩見三省

 

原作伊集院静、という名前にいまだ神通力があるのか、場内はシニア層で満員であった。だが彼らははたしてこの地獄のようなストーリーに満足したのだろうか。だって、愛犬をなくした少女が犬と伴走しているつもりのエア散歩をし、子供をなくした老人がエアキャッチボールをするという狂人対決映画なのだ。まさか伊集院静がこんな話を書いたとも思えないので、空っぽの短編を映画にするために引き伸ばしたら穴埋めが死と狂気だけだった、という感じなのかなあ。

 

 

「みんな嘘をついてる。ルーは死んでなんかいない」

 と独りごちる少女サヤカ(新津ちせ)。愛犬ルーの死が受け入れられず、死を否認して一人でエア散歩を続ける日々。ルーは赤い電車(京急電車)が好きだった……となぜか川崎あたりを舞台にした京急推し映画なのだが、それがなぜなのかはさっぱりわからず。なお、誰もが予測するように、サヤカは映画全編を通じて猛然とモノローグ、その上に「10年後のサヤカ」として有村架純のモノローグが被さるのだが、「10年後のサヤカ」なんてどこにも出てこないので、なんでモノローグしてんのかさっぱり意味フ……

ありし日のルー、散歩の途中に不法投棄されたゴミに隠された小さな穴を見つける。くぐった先は塀に囲まれた都会のエアポケット的空き地。サヤカとルーはこの空き地を自分たちだけの秘密の場所にして、散歩のたびに思う存分遊ぶのだった。そのうちにそこにはなぜかどこにもつながってないレールが敷かれている(枕木はないので、「放置されている」と言うべきか)のを発見する。以下、こんな具合に適当に回想でルーとの過去が説明されてゆく。これは原作の構成でもあるのだろう。そんなわけで一人、秘密の遊び場でルーのことを思っているサヤカ、とそこにどこからともなくこの遊び場を知っているらしき犬があらわれる。

 

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