柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『生理ちゃん』 「二階堂ふみ問題」とは?・・・サブカル女優二階堂ふみには、誰よりも自分の好みで映画を実現する力がある

公式サイトより

 

生理ちゃん

監督 品田俊介
脚本 赤松新
原作 小山健
音楽 河内結衣
出演 二階堂ふみ、伊藤沙莉、松風理咲、岡田義徳、豊嶋花、須藤蓮、狩野見恭兵、藤原光博

 

製作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー。さて、昨年よりつとに主張してきたのが「二階堂ふみ問題」である。二階堂ふみは今ある種の中心にいる。自他ともに認めるサブカル女優二階堂ふみ、実は誰よりも自分の好みで映画を実現する力がある。そもそも『リバーズ・エッジ』も、『翔んで埼玉』も二階堂ふみ本人が希望してできあがった映画なわけで、橋本愛よりも成海璃子よりも圧倒的に自分のやりたい企画を実現する力を持っているのだ。いやこんなことを言うと二階堂ふみおっさん殺しみたいなイメージになってしまうんだが、たぶんそうではなくて事務所の姿勢の問題なんだろう。で、そうした姿勢を貫いた結果がオモコロ連載のWebコミック「ツキイチ!生理ちゃん」の映画化である。こんなの二階堂ふみが「おもしろーい!好きー!」って言ったから映画化された以外考えられない。二階堂ふみ企画のコミック原作映画、これからもどんどん増えそう。

 

 

 原作は生理擬人化コミックなのだが、ある日いきなり生理が「きちゃった……」とやってきて、その日一日女の子がでかい生理ちゃんをおんぶしたりかついだりでひいひい言うという……ほぼ出落ち漫画。それ以上なにかするわけじゃない(生理ちゃんが腹にパンチをくれて「おうふ……」と暗転、みたいなシーンはあるわけだけど、そこで血反吐吐くような生々しいことにはならないわけで)んで、しまいに生理ちゃんがイマジナリーフレンドみたいになってくる。

さらに大きなのは生理ちゃん居座りすぎ問題。月に一度、何日間かだけ訪れるはずの生理ちゃんだが、映画の中ではほぼずっと居座っており、主人公が出会うドラマのときにはつねに生理ちゃんがいるのである。まあ生理ちゃん抜きだと何ひとつ特筆すべきもののない働くOL四コマみたいなストーリーだからしょうがないんだがそれにしても生理ちゃん来すぎ! あのときも、このときも、きみはそこにいた。だからイマジナリーフレンドっぽくなってしまうんだが、そういうもんじゃないだろ。いくらなんでも生理ちゃん居座りすぎである。

物語は某ファッション雑誌のアラサー編集者米田青子(二階堂ふみ)とその会社で清掃アルバイトをする山本りほ(伊藤沙莉)を中心に展開する。伊藤沙莉が演じるのは内気な毒舌キャラで、ムカつくものを見ては猛烈な勢いで内心の毒舌を吐き、携帯に猛烈な勢いで書き込みをするという。伊藤沙莉なので達者なのは当然なのだが、なんだかこの「プアマンズ松岡茉優」みたいな使われ方はちょっと納得がいかない。一時期の安藤さくらもそうだったが、器用な役者を使いべらす映画はまったくよろしくないですね。

さて、編集者青子は今日も今日とて「生理ちゃん」を背負ってひいひい言いながら労働中。「体調悪いの? 昨日彼氏とはじけちゃったんじゃないの?」と編集長からは気軽にセクハラを受ける日々。担当しているコラムニストが原稿落としがちなのも気がかり。そんな彼女の恋人は年上の建築家久保(岡田義徳)。そろそろ……というタイミングでのデートの帰り道、道端でいきなり指輪を出してプロポーズされる。なんで道端でプロポーズしてんのって、みんな低予算が悪いんや! 青子有頂天と思いきや、悩んだ末に「……ごめんなさい」と断ってしまう。久保の娘との関係が不安だったというのだが、この段階でプロポーズするほうもプロポーズする男だ。てかここで断る時点で結果は見えてるよね。その後、とうとう娘かりん(豊島花)と三人で食事をすることになるが、恐れていたとおりかりんは完全拒絶。

「お母さんが亡くなってまだ二年しかたってないのに! わたしのお母さんは一人だけよ!!」

 

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tags: 二階堂ふみ 伊藤沙莉 吉本興業 岡田義徳 松風理咲 狩野見恭兵 藤原光博 豊嶋花 須藤蓮

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