柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『いのちスケッチ』 電通地方映画案件。物語はもちろん東京で行き詰まった若者が故郷に帰ってくる。そこは福岡だからあの人がまっとるわけだよこのバカチンが!

公式サイトより

『皆殺し映画通信』新年会のお知らせ

 

 

いのちスケッチ

監督 瀬木直貴
脚本 作道雄
撮影 岡田賢三
音楽 高山英丈
主題歌 Insheart
出演 佐藤寛太、藤本泉、芹澤興人、須藤蓮、林田麻里、前野朋哉、風間トオル、高杢禎彦、浅田美代子、渡辺美佐子、武田鉄矢

 

電通地方創生ムービープロジェクト第三弾、電通九州プロデュース、監督は地方映画の巨匠瀬木直貴というわけで『恋のしずく』に続く電通地方映画案件。本気で電通のシノギになりつつあるようで、このあとも企画が控えているという。それにしても瀬木直貴、電通にやとわれてから日本の各地を流れ流れ、流れた先でさらっと映画を作っては爽やかに去ってゆくというおまえは日活映画の主人公か? 「カメラを持った渡り鳥」か? と言いたくなるようなフィルモグラフィー、今回は福岡県は大牟田市を舞台にしております。物語はもちろん東京で行き詰まった若者が故郷に逃げ帰ってくると、そこは福岡だからあの人がまっとるわけだよこのバカチンが!

 

 

東京はスカイツリーの足元で漫画家をめざして頑張っていた田中リョータ(佐藤寛太)だったが、見下していた後輩(前野朋哉)がひょんなことからデビューを決めてしまったので完全に心折れてしまう。と、次のカットでもう大牟田。早いよ! ちなみにリョータが描いている漫画、さらには彼が「衝撃を受けて漫画家を目指した」と告白する漫画があるのだが、そのモデルになっているのが三隅健、『ムルチ』などで知られる夭折の天才漫画家で、大牟田出身だという。さらにリョータが大牟田に着くとなぜかちょうどその日が祭りの日で「大蛇山」祭りの真っ最中。こうやって手早く手堅く地元名物を入れ込んで紹介してゆくのはさすがにベテラン地方映画監督らしい手練っぷりなのだが、上手ければ上手いほど地方映画としての限界を感じてしまう。つまり、そこに登場する「地方名物」はどこにでもある交換可能なものであり、それを使い古しの物語の中に放り込んでいくだけで、その土地でなければ生まれないストーリーなど出てくるはずがないからである。こうした地方映画が作られれば作られるほど、作り手たちの意図とは逆に、日本の地方はどこも代わり映えせず同じような課題を同じように抱えているという印象ばかりが積み上げられていく。

 

 

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