柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ハルカの陶』 いったい都会には何人、日常に物足りなさを感じているOLがいるのか。日本の地方には何人「がんこで口下手な職人」がいるのか

 

公式サイトより

 

 

『皆殺し映画通信』新年会のお知らせ

 

ハルカの陶

監督・脚本・編集 末次成人
撮影監督 Yohei Tateishi
音楽 佐藤礼央
出演 奈緒、平山浩行、笹野高史、村上淳、岡田健太郎、長谷川景、村上真希

 

「日常に物足りなさを感じていた小山はるかは、デパートで備前焼の展覧会を目にする。1枚の大皿に心を奪われたはるかは、備前焼作家〈若竹修〉の名前だけを頼りに、岡山県備前市へ飛ぶ! 」またしても無為な日々を惰性で過ごしているOLの登場である。いったい都会には何人、日常に物足りなさを感じているOLがいるのか!? で、行った先で出会うのが「がんこで口下手な職人」。もう日本には何人「がんこで口下手な職人」がいるのか……という具合でどこからどこまでもクリシェで見事に固められた地方町おこし映画。町おこし映画のクリシェに実にぴったりハマったテンプレ映画だなあと思ったが、実は原作コミックがあるのだという。何も知らないOLが頑固な職人に怒られながら備前焼のいろはを学んでいくのに読者が並走する薀蓄漫画スタイル。これはこれでテンプレ化しているので、以下、クリシェポイント(*)を数えながら映画の紹介をしていきたい。

舞台はもちろん岡山県備前市。岡山県知事も特別出演の堂々たる岡山映画である。

 

 

惰性で無為な日々を過ごしていたOLはるか、ある日上司につれられていったデパートで、ふと目にした備前焼の大皿に心を奪われる。惰性で無為な日々を過ごしているくせに無駄に行動力だけはあるはるか、すぐに岡山に飛ぶ。伊部の駅を降りると「あのー、若竹修さんの工房はどこですか?」と縁台で酒をかっくらっている爺さんに聞いて窯を目指す。で、「ごめんくださーい!」と声をかけて、返事がないと、ずかずかと家にあがりこむ。しまいに展示即売ギャラリーに来た客に勝手にセールストークして売り込みまではじめるという……いくらなんでもやりすぎではないでしょうか。何事かと怪訝な顔で出てきた若竹修(平山浩行)に「あんた誰や」と声をかけられる。

「若竹修さんにお取次ぎねがいます!」と言う。
「若竹修はわしやが」

 撃沈……それでも負けずに

「あの……皿を見て感激しまして……弟子にしてください!」
「弟子はとらん」

 敗北……

諦めきれないはるか、そのまま修がろくろをこねるところをドアの隙間からじっと見続けて……気づくと朝になっていた! さすがに疲れ果ててばたんと倒れる。目をさましてなおも「大皿を見て胸が熱くなったんです! がんばりますから!」

「弟子はとらん」

 あきらめるか……と思いきや、縁台で酒をかっくらってた爺さんが実は人間国宝の陶工榊陶人(笹野高史)であり(*)、なぜかハルカに口添えし、陶人に頭のあがらない修は弟子入りを認める。さっそく会社を退職、意気揚々と修の工房に住みこむハルカ。だが、もともと弟子など取りたくなかった修、何も面倒見てくれず放置プレイ。修の同級生ら、周辺にいる連中は大いに歓迎してくれるのだが、本人の話になると口をつぐんでしまう。しょうがないので陶人先生と話すと、こちらは口が軽いのでペラペラと「実は修の父(村上淳)が窯の前で死んだ」という秘密を喋ってしまう。デリカシーに欠けるハルカが突っ込んだせいで修激怒、皿を叩き割って「出てけ!」

 

 

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