柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『河童II Kappa 2 – But, we have to rest.』 カエルカフェ映画の通常予算規模をはるかに越えた超大作。しかしやっぱりカエルカフェ映画

公式サイトより

河童II Kappa 2 – But, we have to rest.

製作・監督 秋原北胤
原作 芥川龍之介
脚本・技術統括 落合雪江
音楽 梅津和時
出演 美保純、ベンガル、和泉元彌、綾田俊樹、咲良、梅津和時、スティーブ・エトウ

 

お久しぶりのカエルカフェ映画である。一年の計はカエルカフェ映画にあり。今年もカエルカフェからはじまる正月となった。本作は芥川龍之介晩年の小説『河童』の映画化。カエルカフェおなじみの版権の切れた名作路線なのだが、実は秋原監督、同じ原作を2006年にも映画化している(だから『~II』なのだという)。脚本そのままでセルフリメイクという、カエルカフェにしても珍しいかたちだ。男性だった主人公は特段理由もなく女性に変わって美保純が演じる。

さらに珍しいのはエキストラの大量動員で、河童の国では全員が特殊メイクのくちばしを鼻につけて河童を演じる。ライブ場面では全員が揃いのシャツを着て、合戦場面では馬に乗ったカワウソ族(付け鼻と付け尻尾をしている)が河童に向かって矢を射かける。これまでカエルカフェ映画を見たことない人にはこの衝撃は伝わらないかもしれないが、ともかくカエルカフェ映画の通常予算規模をはるかに越えた超大作。驚きである。しかしだからといってそれ以外の美術や衣装に使う金があるかというとそんなことはなく、「河童国」の美術は市中に「河童語」で書いた紙を貼るだけ、衣装は基本的に演者の自前。だもんで映画内での統一がまったくとれておらず、和泉元彌だけはものすごく豪華な衣装を着ているのに、そこらの河童はシャツにジーンズみたいな普段着だったりする。美保純なんか映画の最後までジーンズにモノトーンのシャツという衣装一着着たきり! いやせめてメイクをちゃんとやるくらいのことはしてあげて! 美保純さん還暦近いにもかかわらずたいへんおきれいでらっしゃるんですが、とはいえそこは考慮してさしあげて! まあそういう配慮など一切忘れてスッピン勝負! これがカエルカフェである。

 

 

二見(美保純)は楽器会社に長年勤めているOLだが、最近のIT化にはついていけないものを感じつつある。合併で傘下に入ったドイツの親会社から社長が視察にやってくる。社長の息子は宿題で日本の歴史を調べなければいけないが、本人は竹下通りに行きたくてうずうずしている。なので誰か日本人社員に「日本の歴史」を調べてくれないか?と公私混同の命令がくだる。

「二見さん、どうですか?」

 と役立たずの二見に白羽の矢が立つ。「は、はあ……まあサボれるからいいか……」と神社仏閣をまわって「日本の歴史」をメモる二見。つか彼女が調べてる「日本の歴史」っていったいなんなの? 彼女の日本語メモをドイツの中坊は理解できるの? そんな疑問でこっちの頭がいっぱいになったところで、なぜか河童の姿をチラ見して動揺した二見、足を滑らせて穴に落ちてしまう。

気がつくとそこは河童の国でした。

 

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