『ラストレター』 松たか子のサイコパスさえ疑わせる強烈さ。庵野秀明の演技を味わっている間もないほどのホラー
→公式サイトより
『ラストレター』
監督・原作・脚本・編集 岩井俊二
企画・プロデュース 川村元気
撮影監督 神戸千木
音楽 小林武史
主題歌 森七菜
出演 松たか子、福山雅治、広瀬すず、庵野秀明、森七菜、豊川悦司、中山美穂、小室等、水越けいこ、木内みどり、鈴木慶一、降谷凪
岩井俊二の映画というのは、深い色の美しい映像で、少女が廃墟や水辺で遊び、それに美しいピアノ音楽が流れる……ようなものだと思っていたが、もうひとつ重要なポイントを忘れていた。それは「松たか子がキチガイ」ということである。いやこの映画の松たか子のキチガイぶりったるやサイコパスさえ疑わせる強烈さ。出演が判明したときに人々を戦慄させた庵野秀明の演技を味わっている間もないほどのホラーであった。
岸野辺裕里(松たか子)は姉の葬儀のために二人の子を連れて実家に帰ってくる。高校のころから成績もよく、人気者だった姉未咲に劣等感を感じていた裕里は、姉そっくりに育った姪鮎美(広瀬すず)に眩しい目を向けるのだった……いや鮎美、いろんな人に「お母さんそっくりだね」と言われるのだが、高校時代の未咲も広瀬すずが二役で演じているのでそりゃそっくりだろ!!!としか思えない。一応快活な優等生と母の死で暗い少女とわかりやすく演じ分けてはおります。暗い鮎美を心配し、裕里の娘颯香は夏休みが終わるまで家に残るという。息子を連れて家に帰った裕里、姉への同窓会案内が来ていたのを思い出し、姉の死を伝えるために同窓会に出席することにする。
同窓会に行くと姉と間違えられ「いえわたし未咲じゃなくて……」と言いかけても「またまた~」と取り合ってもらえない。すると裕里、そのまま姉のふりをして、あまつさえスピーチまでしてしまうのだ。帰ろうとすると近寄ってくる男が。
「あのー乙坂ですけどわかります?」
彼こそは高校時代裕里が憧れていた乙坂鏡史郎(福山雅治)なのだった。
「……小説読んでくれた?」
「え……小説って……?」
裕里が自分の小説を知らないことにあからさまに失望する乙坂。「なんのこと?」と訊ねようとすると「それは長くなるから……」と一杯やりながらと誘われる。断るとじゃあアドレス交換を……と言われて「ママ」と書かれたLINEアドレスを交換する。
「ママやってますよ~二児の母です」
帰ると夫(庵野秀明!)に「どうだった?」と聞かれて
「なんか姉と間違われちゃって……言い出せなくてそのままになっちゃった……」
「え? 死んだこと言ってないの? なんのために行ってきたの?」
「そうなんだよね……なんのためだろう……?」
とか言ってるけどどうみたって自分が気持ちよくなるためだろう! 憧れていた姉のふりをしたらみなにチヤホヤされたんで、嬉しかったしか理由がないじゃないか! で、調子に乗ってたら乙坂からもらった「二十五年間ずっときみに恋してたような気がします」とかなんとかいう浮かれメッセージを見られ「どういうことなんだよ!」と怒った(怒ると声が裏返る)夫庵野が携帯を風呂に投げこんで壊してしまう。
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