柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ヲタクに恋は難しい』 ・・・福田雄一お得意の「こんなもんでよかんべイズム」が炸裂。オタクだって?こんなもんでよかんべ。ミュージカル?こんなもんでよかんべ

公式サイトより

 

『ヲタクに恋は難しい』

監督・脚本 福田雄一
原作 ふじた
撮影監督 工藤哲也
ミュージカル作曲編曲 鷺巣詩郎
ミュージカル作詞 及川眠子、藤林聖子、福田雄一
劇伴音楽 瀬川英史、日向萌、酒井麻由佳
出演 高畑充希、山崎賢人、菜々緒、賀来賢人、今田美桜、ムロツヨシ、佐藤二朗、斎藤工、内田真礼

 

「福田雄一コメディ最高傑作!恋愛不適合な愛すべきヲタクたちの悲哀と歓喜の協奏曲(ララランド)」

びっくりした。これ本当に『ラ・ラ・ランド』だったのである。つまり本当にミュージカルだったのだ。オタクが「恋は難しい~」と歌うミュージカルなのである。と聞いたらいやそれ正気かよ、と誰もが思うだろう。大丈夫、作ってるのは福田雄一である。福田雄一がここまでのアイデアを思いついたら、あとはどうする? そんなの、あとは鷺巣詩郎に丸投げして終わりに決まっている。福田雄一お得意の「こんなもんでよかんべイズム」炸裂だ。オタクだって? こんなもんでよかんべ。ミュージカル? こんなもんでよかんべ。ギャグ? ムロツヨシと佐藤二朗を入れておけばよかんべ。観客を舐めくさり、扱うネタを舐めくさり、何ひとつ調べることも真面目に考えることもせず、「こんなもんでよかんべ」と放り出して出来上がったのがこれである。

 

 

さらに驚いたのはこれ本当に「オタクに恋は難しい」という話なのである。「オタクはコミュ障で挙動不審で人の気持ちがわからないので恋愛できない」という話なのだ。「アニメやゲームが好きで、そっちを優先しちゃうから恋愛とか不要な人間関係に割いてるソースがない」じゃないのだ。ナチュラルに上から目線でオタクを見下して、自分がオタクを嘲笑っていることに気づいてすらいない。『銀魂』とかを楽しんでいた人たちに言いたいのは、「こんなもんでよかんべイズム」を許していれば、いずれは自分の愛するものが「こんなもんでよかんべ」と言われるだろうということだ。

「こんなもんでよかんべ」の最大の犠牲者は何かと言えば、それはミュージカルである。主演に高畑充希を当てたところまではよかったが、歌はともかく踊りについては何も考えていなかったようである。というか、そもそもダンスをちゃんと練習する準備期間もなかったんだろう。ライアン・ゴスリングもエマ・ストーンも歌手でもダンサーでもない。でも、それなりの練習を積んでみっともなくないところまでは仕上げるのがハリウッドである。しかるに本作ではダンスはほとんどゼロ回答。高畑充希と山崎賢人が歩きつつ口ずさむ歌をクレーンで高所からロングショットで写す……シーンが延々とくりかえされるのだが、こんなミュージカルあるか? 百歩譲って金が無い日本映画では歌かダンスかどちらかしかトレーニングの時間がなかったのかもしれない。しかしそれならなぜダンスをやらせないのか。極論を言えば、歌は吹き替えでもいいのである。だけどダンスは本人が踊っていなければなんの意味もない。踊れない人間に「そこそこ」の歌をうたわせて何が得られるのか。それは「こんなもんでよかんべ」の現実である。

 

ヒロイン、桃瀬成海(高畑充希)は転職先で二藤宏嵩(山崎賢人)にばったり会い、ものすごく挙動不審な感じで驚き恐怖する。実は二人は旧知の仲、感情の薄いゲームオタクで必要なこと以外は口に出さないヒロタカは周囲からもオタクとして知られているが、前の職場でオタバレしていずらくなったキラキラOL成海はアニメオタクであることを隠しているのだった……というんだが、オタクをバラさないでくれとヒロタカに懇願するその挙動不審さが、オタクかどうか以前におかしいんだっての! 例によって戯画化しすぎてギャグになってしまっているのだが、前提がすでに崩壊してしまっている。しかもオタク=変人というひどい決めつけ。

 

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