柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『コウとチョウゴロウの夏 高山社 小さな記憶の物語』 「まち映画」の七つの原則とは? いったい自分が何を見せられてるのかまったくわからなくなる、群馬映画の困惑の瞬間

公式サイトより

コウとチョウゴロウの夏 高山社 小さな記憶の物語

監督・脚本・編集 藤橋誠
撮影監督 中島元気
音楽監督 本多徹
主題歌 理子
出演 高岩七菜、津久井黎多、高橋里帆、黒澤亮、高見海吏、伊藤綾香、阿久澤藍、坂井仁衣那

 

「藤岡まち映画」。それは群馬県藤岡市を舞台にした、というよりは藤岡市そのものがテーマになった映画である。監督・脚本をつとめるのは藤橋誠。実は群馬県市町村をめぐって「まち映画」を作っている群馬映画の巨匠なのである。まち映画製作は2002年の太田市を舞台にした『home』からはじまり、群馬県内各所を中心に地域映画を作りつづけてもう十八年。この『コウとチョウゴロウの夏』でまち映画二十七作目になるという。群馬では誰もが知っているが、中央に出てくることはないのでその全貌を知る者がいない。高校野球の地方大会だけで名高い「まだ見ぬ強豪」のような存在なのである。白新高校かな?

まち映画は七つの原則にしたがって作られているという。

(1)プロデューサーがその土地(企画の中心となる場所)の住民ないしは関係者であること
(2)主な出演者に地域の子供たちを起用する
(3)映画完成ありきではなく、映画の制作過程を大事にすること
(4)主題歌・主題曲をオリジナルで制作すること
(5)メイクにプロをいれること
(6)劇場公開(映画館等)を必ず行い、DVDを作成し、参加者の努力がフィードバックされるようにする
(7)異世代、地域間交流を大切にしながら、関係者全員が真摯に映画制作に取り組める現場を作る

 メイクにこだわっているのが興味深いが、ポイントは(1)と(2)だろう。まずはあくまでも地元の当事者を巻きこむこと。『コウとチョウゴロウ~』の場合だと藤岡青年会議所(JC)が製作母体になっており、ここが製作なら藤岡市内の中小企業を巻き込みやすい仕組みだ。何よりも製作から上映までの過程でバックレられる心配がない。子役を使うのも、地元との関係性を深める重要なポイントである。単に役者志望の若者を出演させるより、子役ならはるかに多くの人を巻き込み、親戚縁者を動員することができるだろう。どうせ素人を使うなら、中途半端な役者志望なんかよりは子供のほうが演技だって見どころがあるかもしれない。

とまあそれくらいの感じで待望の東京上映会に参加したのだが、いきなり驚いた。

 

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