柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『岡野教授の千年花草譚』 観客はすべて俳優の舞台挨拶のときに来てしまうので、有料試写会だけで元が取れてしまったら劇場公開する必要はない。これが2.5次元系映画の恐ろしさ

公式サイトより

 

岡野教授の千年花草譚

監督・脚本・編集 今野恭成
撮影 星潤哉
音楽 pachi
出演 岡野陽一、井澤勇貴、松本岳、山本一慶、河内美里、輝山立、加藤大騎、田口巧輝、岡野陽一

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ついにやってきた! この映画、実は数年前から注目していた作品だ。二〇一八年ごろにはとっくに完成しており、舞台挨拶付きの有料試写会は何度かおこなわれていたのだが、一向に劇場公開される気配がなく、あるいはこのまま公開されないのではないか……とまで思っていた。これが2.5次元系映画の恐ろしさで、つまり観客はすべて俳優の舞台挨拶のときに来てしまうので、有料試写会だけで元が取れてしまったら別に劇場公開する必要はないのである。そんなわけで塩漬けになって二年……すっかり忘れそうになったころ、第二作の完成と同時に公開されることになった。まあ永遠に封印してくれててもかまわなかったんですが……

 

 

霞ヶ浦農科大学の菌類学科教授岡野馬楠(岡野陽一)は粘菌研究の第一人者。研究室にいるのは人間嫌いで、炊飯器を保温に使ってカビを育てるのが趣味の花山(井澤勇貴)といろんなカビを使って手当り次第チーズを作っている食いしん坊の香取(松本岳)という、どこかピントはずれたイケメン二人組。彼ら二人を中心に、次々に登場する戦隊モノやら舞台やらに出ていたイケメン男子がワチャワチャするのがほぼ映画の見どころすべてである。

そこへやってきたのが健康食品なぞ作っているうさんくさい会社、平安ヘルスコーポレーションの藤原(加藤大騎)だ。藤原道長の子孫だというこの男、かねてから千年前に道長が「千年花草」を埋めたという伝承を調べており、その場所をついに割り出したのだと言う。千年花草とは不死の生命だとされることから粘菌ではないかと考えられるので、その捜索に粘菌研究の第一人者である岡野教授を動員しようとなったのだ。千年生きた千年花草を食べると不老不死が得られると道長は信じていた。今がちょうど千年目というわけである。

「あんたたち、そんなこと信じてるんですか? ただの迷信ですよ」と岡野教授。その言葉を聞いて「はっはっは」と馬鹿笑い。「そんなもん、信じてるわけないだろ! でも信じる人間はいるんだよ! ワラをも掴む思いの年寄りの金持ちに売りつければいいのさ!」

億にはなると言われて岡野教授は大興奮。その金があれば念願である南極の菌類探検調査に行ける! 大いに乗り気になった教授は二人を連れて当の山に行く……がそこで二人を山中に放り出して逃亡。というのも虫が嫌いだから! それにしても以後二人はひたすら山の中で適当に選んだ場所をスコップで掘るだけなんで、別に粘菌研究者とかに頼まなくてもよかったような。

 

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