柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『癒やしのこころみ 自分を好きになる方法』 「セラピスト」の素晴らしさを訴える癒やし系エクスプロイテーション……という世にも癒やされなさそうな映画が登場。水素水も盛り盛りだ!

公式サイトより

癒やしのこころみ 自分を好きになる方法

監督 篠原哲雄
脚本 鹿目けい子、ますもとたくや、錦織伊代
撮影 長田勇市
音楽 GEN
主題歌 RAY
出演 松井愛莉、八木将康、水野勝、中島ひろ子、秋沢健太朗、寒川綾奈、橋本マナミ、渡辺裕之、藤原紀香

「心と身体を癒す「セラピスト」と呼ばれる職業の人たちはここ数年で急増し、人気職業の1つになっている」というわけで日本リラクゼーション業協会後援で、「セラピスト」の素晴らしさを訴える癒やし系エクスプロイテーション……という世にも癒やされなさそうな映画の登場である。「癒やし」という美名のもとで色と欲のつっぱらかった大人たちが繰り広げる醜い争い……みたいな話じゃないんですか? どうやら違うらしい。そういう話のほうが絶対おもしろいと思うんだけどなあ。でも大人の事情でそういう映画は作られないので、これは人を癒やして自分も癒やされる、心と身体を一緒に癒すセラピストの活躍を描く映画です! もちろん藤原紀香も特別出演。水素水も盛り盛りだ!

 

 

広告代理店で働く一ノ瀬里奈(松井愛莉)は超絶パワハラな糞上司によるモラハラブラック労働に耐えかね、心身ともに疲れ果てて退職する(電通だとは言ってないよ!)目標もないままふらふら歩いていたら、たまたまリラクゼーション系求人リジョブのリクルート・イベントに出くわす。中ではカリスマセラピスト鈴木カレン(藤原紀香)が実演中。彼女のフットマッサージを受けた里奈

「無理されてることがあるんじゃないですか……体が元気になれば心も元気になりますよ」

 とふくらはぎを揉まれただけで脳からアルファ波が出てたちまち洗脳されてしまう。一ヶ月後、マッサージ屋(Re.Ra.Ku. がモデルになっている)で働きはじめる里奈であった。で、チラシを配っていると、通りがかった大柄な男碓氷(八木将康)が「じゃあ揉んでくれよ」と言ってくる。他のマッサージ師はみなふさがっているので、恐る恐る揉んでみる里奈。だが碓氷からは容赦ないダメ出し。

「きみ、この仕事向いてないんじゃないの?」

 よっぽど下手なのか!と思ったら(下手は下手らしい)、そうじゃなくてなぜか精神面を指導してくる(この映画、全部それなんだよ!)

「きみ、なんのためにやってるの? ただの自己満足なんじゃないの? 技術の問題じゃないんだよ」

 なんで(マッサージの師匠からならまだしも)客から精神面のダメ出しをされなければならないのか。これじゃあブラック労働に疲れて行った先もブラック業界だったという落ちである。この映画においては、なぜか絶対に「マッサージ師」と言わず「セラピスト」と言うように、マッサージは肉体ではなく精神を「癒やす」仕事なのである。紀香が唱えていたあまりにシンプルな心身一元論こそがリラクゼーション業界の訴えたいところなのだろう。でも「心を癒やしたい」と思ってるマッサージ師に揉まれたいとはあまり思わないんだけどな……

 

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