柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『悲しき天使』 すべての汚れを肉体で受け止めて男たちを救ってくれる聖娼婦とかとっても気持ちわるいんだけど、それが昭和の娼婦観という奴ですかね

公式サイトより

 

悲しき天使

監督・脚本 森岡利行
原作 山之内幸夫
撮影 吉田淳志
音楽 Les.R-Yuka
出演 和田瞳、水野勝、川上奈々美、重松隆志、森田亜紀、円谷優希、山田奈保、那波隆史、お宮の松、三浦浩一、木下ほうか

 

大阪には今も遊郭が残っている。うん、残っていることはみな知っている。だけど、それは口に出してはならない公然の秘密で、映画になったりしたら誰かが大阪湾に浮かぶようなところである……と思っていたのだが時代は変わる。飛田遊廓を舞台にした映画が作られる時代がやってきた。もちろん映画の中では飛田とは呼んでおらず、ロケ地も微妙に飛田ではなかったりするようで、そこらへんはぼかされているのだが、いずれにせよこの世界が映画に写されるというのは画期的なことだと言えよう。興味のある人にはとりあえず一見をお勧めしておく。

元山口組顧問弁護士として知られる山之内幸夫が書いた原作を『純平、考え直せ』などを撮っている森岡利行が舞台にかけていたのだが、それを満を持して映画化という流れ。製作はキングレコードだが、やはり山之内氏のコネクションがものを言ったのか……と思われてしまうのは無理からぬところ。某新地の遊郭に集う女達の色模様……という設定だが、脱いでいるのはヒロインの和田瞳と脱ぎ役の川上奈々美だけなので、ここらへんはもう一考の余地あり。というか、この人間模様とかいうあたりはやっぱり『赤線玉の井ぬけられます』あたりを意識してるんですかねえ。そう考えるといろいろとさびしい……

 

 

さて、物語の主人公は茂(水野勝)。よく喋るバーテン(木下ほうか)相手に過去を語る。トラック運転手をしていた茂だが、事故を起こして大借金を背負い、ふらふらと色街に流れてきた。そこで「吉野屋」の看板女郎である一美(和田瞳)と出会い、「女師」として生きていくことになる。この「女師」、茂は「ヒモみたいに甲斐甲斐しく世話するんでもなく、ホストみたいに嘘をつくんでもない。あくまでも真心で“心”をケアするんだ」というんだが、それ料理も作らないダメなヒモじゃなくてなんなのか。そんな茂、一美を刺して刑務所から帰ってきたところだという。二人のあいだにいったい何があったのか……

 

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