柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『妖怪人間ベラ』 実写化したら主人公がベラになって萌え女子高生になってしまった。利権の匂いしかしない現代的プロジェクト。現代映画の病理が全部入り

公式サイトより

妖怪人間ベラ

監督 英勉
原作 ADKエモーションズ
脚本 保坂大輔
撮影 川島周
音楽 野崎美波
主題歌 BREAKERZ
出演 森崎ウィン、emma、堀田茜、吉田奏佑、吉田凜音、桜田ひより、清水尋也、六角精児

妖怪人間ベム50周年プロジェクト」で実写化したら主人公がベラになって女子高生になってしまった。「ベラの鞭は痛いよ」どころか到底鞭なんか振りそうもない魔少女である。自立した性的な女性であったベラが萌え女子高生になってしまうのがいろんな意味で現代を象徴している気がするのである。製作・配給はDLE。『DCスーパーヒーローズvs鷹の爪団』や『サムイボマスク』でおなじみの映像利権ビジネス会社である。『妖怪人間ベム』の製作会社である第一動画が解散しているため、その権利を活用しようと考えた連中が「50周年プロジェクト」をたちあげ、そこで活躍したのがDLEというわけである。こんな利権の匂いしかしない現代的プロジェクトを監督したのが英勉。この人のフィルモグラフィー見てると本当にいろんなことが思わされる。第二の堤幸彦と呼べばいいのか、利権案件ばかりを一手に引き受けて年に数本映画を撮っている。全部は見ていないのだが、レビュウ書いていない映画も含め、どれもこれも……特に今年は派手な活躍で、英勉研究でもすべきではないかと思われる勢い。そんな現代映画の病理が全部入りの映画、池袋のシネコンでは観客三人でした……

 

 

某広告代理店の窓際社員新田康介(森崎ウィン)は、「妖怪人間ベム50周年プロジェクト」の担当で、オリジナルアニメのDVD化を進めているがやる気も能力もなく、後輩篠原(清水尋也)からさえ見下されている。ところがDVD製作の過程で、アニメには封印された「幻の最終回」があるという話を聞く。当初作られた最終回が放送を拒否され、新たに最終回が作られ直したのだという。まあここらへんは『妖怪人間ベム』が当初の予定から短縮され、曖昧なエンディングで終わっていることから生まれたアイデアなのだろう。ついに発見された「幻の最終回」のフィルムを上映してみる新田。それは警官隊に囲まれた中、ベロが火炎放射器で焼き殺され、ベラが撃たれて生死不明のまま終わるという衝撃的なものだった。

 

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