柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『HARAJUKU ~天使がくれた七日間』 2.5次元系映画として企画されたとおぼしいが、それと原宿の銭湯を舞台にすることがどうつながるのか? 入浴シーンを盛り込めるとか?

公式サイトより

HARAJUKU ~天使がくれた七日間

監督・脚本・撮影 松田圭太
音楽 加藤崇、三留章嗣
主題歌 テジュ
出演 馬場良馬、椎名鯛造、平野良、テジュ、坂ノ上茜、高城亜樹、東さと

原作は朗読劇。舞台は若者の町原宿。特別協力に吉野石膏がクレジットされ、上映前にCMも流れるので出資もしているのだろうが、建材メーカーがこんな映画に金を出してなんのメリットがあるのかまったく想像がつかない。製作は怪しい利権案件には定評のあるアイエス・フィールド。アイエス・フィールド研究もしたいものですね。主演の三人はいずれも2.5次元系俳優ということなので、2.5次元系映画として企画されたとおぼしいのだが、それと原宿の銭湯を舞台にすることがどうつながるのか? あっひょっとして入浴シーンを盛り込めるとかそういう理由? しかしその割には特にサービスシーンもなかったような。とはいえ舞台を原宿にしたおかげで最初と最後に取り壊されてしまったエレガントなJR原宿駅旧駅舎が登場しているので、記念としての意味はあったかもしれない。

 

 

ある日、銭湯・明治湯の開店準備をしているヒデオ(馬場良馬)の前に白づくめの男(椎名鯛造)があらわれる。

「お客さん、まだ開店前ですんで」
「風呂に用はない。お前の魂抜きに来たから」
「殺し屋か!?」
「いや、天使」

 こんな健康な自分がなんで? 本当は三日前に来るはずだったが、原宿の人出に見とれてすっかり遅刻してしまったんだと天使は説明する。ゆるいなー。なんでこんなに人がいるの?

「原宿は若者のファッションの中心地だからね! 明治神宮もあるから外国人も来るし!」

 魂を抜かれそうになったヒデオ、必死で原宿名物の話をする。パンケーキ店が人気だと言われた天使「天使のままだと味がわからないから人間になろうかな。ただ一度人間になると一週間戻れないんだよね~」ここにも原宿のパンケーキ大好きおじさんが! ここで人間になれば一週間魂を抜かれることはない! つまり天使からもらった時間、人生のロスタイムというわけだ。で、人間の血を一滴垂らした水に全身浸かるとかいう銭湯あてがきみたい設定で人間になり、ヒデオからツバサという名前をもらった天使である。それにしてもここまで銭湯推しだもんでてっきり実際の原宿銭湯ロケなのかと思ったんだけど、原宿に銭湯なんかとっくにないのである。本当、なんでこんな設定にしたのか……

 

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tags: 2.5次元映画 アイエス・フィールド テジュ 三留章嗣 加藤崇 坂ノ上茜 平野良 東さと 松田圭太 椎名鯛造 馬場良馬 高城亜樹

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