柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『鬼ガール!!』 地方映画の巨匠のスタッフだった監督が、持てる電通コネクションをフル動員して、故郷である河内長野を舞台に地方創生映画を作った結果・・・

公式サイトより

鬼ガール!!

監督 瀧川元気
原作 中村航
脚本 中村航、作道雄、瀧川元気
音楽プロデューサー 梶原徹也
撮影 岡田賢三
出演 井頭愛海、板垣瑞生、上村海成、桜田ひより、吉田美月喜、曽野舜太、深尾あむ、末次寿樹、テイ龍進、六平直政、山口智充、吉村洋文

奥河内、すなわち大阪府の河内長野市とか千早赤阪村あたりを舞台にしたご当地町おこし映画なのか……と思って見に行ってみたら配給はSDP(スターダストピクチャーズ)だわ電通や読売新聞が製作委員会にはいってタイアップしてるわ特別協賛にはごっつい会社がたくさん並んでるわイタリアロケはあるわ、しまいに吉村洋文大阪府知事が友情出演してるわでいろいろとんでもない映画だった。なんでこんなすごいのか。監督の瀧川元気は地方映画の巨匠瀬木直貴のスタッフで、電通製作の広島日本酒映画『恋のしずく』でプロデューサーをつとめた経験がある。今回は自分の故郷である河内長野を舞台に地方創生映画を作ることになり、持てる電通コネクションをフル動員して頑張ってみた結果ということなんですかね。原作は『100回泣くこと』とか『デビクロくんの恋と魔法』とか母さん野間文芸新人賞ってなんだったんでしょうねでおなじみ中村航。

 

 

舞台は奥河内の神ガ丘。かつては鬼住という地名だったこの地に、鬼の末裔である鬼瓦一家が住んでいた。男やもめの父(山口智充)、中学生の妹(深尾あむ)と小学生の弟と四人暮らしの鬼瓦ももか(井頭愛海)は今日から高校生である。鬼とはいっても頭から角が生えていて運動能力抜群という以外は人間と変わりない。頭の角は集中すれば引っ込めることができる。「鬼バレ」せずに青春を謳歌するぞと意気込むももかである。鬼だとバレてはならないとももかは怯えているのだが、この程度なら別に困らなさそう。ラムちゃんコスプレで大人気という方向性だってあると思うのだが。現に中学生の妹はガールズバンド「鬼ビート」のボーカルとしてブルーハーツをカバーして大暴れしている。「鬼バレするの怖くない?」と姉にきかれても「鬼である自分も含めて肯定できなかったら自分を嫌いになってしまう」と断言。妹のほうが断然大人なのである。

そういうわけで自転車で延々走って学校まで行くものの、校門前に立っていた謎のフランス人に気を取られて転倒。そこで爽やかに声をかけてくれたのがイケメンの神宮寺岬先輩(上村海成)である。映画部で撮った映画が高く評価されているというナルシスト先輩がさっそくの口説き。

「きみ、かわいいね……ぼくの映画のヒロインにならないか? 一緒にレッドカーペットを歩こうよ」

 これが青春だ! 昔「怪力女」と豆をぶつけてくるいじめをしかけてきた蒼月蓮(板垣瑞生)と同じクラスになってしまったことも気にならない。放課後いさんで映画部室に出かけるとそこには女・女・女が大集合! 愕然とするももか。そう岬先輩はめぼしい女の子を片っ端から口説く人だったのである。

「みんな、ぼくの映画のために集まってくれてありがとう! ぼくはみんなのことが大好きだよハート!」

 女の子たち「キャーッ!」

 

(残り 2985文字/全文: 4316文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

tags: テイ龍進 上村海成 中村航 井頭愛海 作道雄 六平直政 吉村洋文 吉田美月喜 大阪府 山口智充 岡田賢三 曽野舜太 末次寿樹 板垣瑞生 桜田ひより 梶原徹也 河内長野市 深尾あむ 瀧川元気 瀬木直貴 町おこし 電通

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ