柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『映像研には手を出すな』 ちょっと待ってほしい。映像研の三人はアニメを作りたいのである。実写ってどうなのよ?それでどうしたかというと主演三人に乃木坂46のメンバーを揃えて…

公式サイトより

映像研には手を出すな

監督 英勉
原作 大童澄瞳
脚本 英勉、高野水登
製作・プロデュース たくさん
撮影 川島周、古長真也
音楽 佐藤望
主題歌 乃木坂46
出演 齋藤飛鳥、山下美月、梅澤美波、小西桜子、グレイス・エマ、福本莉子、松崎亮、桜田ひより、板垣瑞生、赤楚衛二、鈴之助、出合正幸、松本若菜、山中聡、浜辺美波、高嶋政宏、安倍乙

手を出すなと言われてるんだから出さなきゃよさそうなものをわざわざ手を出して番犬に噛まれる馬鹿な子供みたいなことをやっている毎日。しかし出すなと言われてもそこに山があったら登らざるを得ないではないか。たとえ地雷が埋められているとわかっていようとも。そんなわけで原作は大童澄瞳による同名コミック。アニメを作りたくてしょうがない女子高生三人組が大暴れするコミックは、あふれるアニメ愛で大いに注目され、満を持してテレビアニメ化。そしてついに実写化となったわけである。だがちょっと待ってほしい。「映像研」の三人はアニメを作りたいのである。主人公の浅草は「最強の世界」を描きたいと願っている。だから彼女は自分の描いた世界=アニメの中に入りこむのだし、それがアニメとして動き出す瞬間が恍惚なのである。だから、この漫画がアニメ化されるのは必然、というよりもアニメこそがあるべき真のメディアであり、それを目指して描かれて漫画なのだと言ってもいいかもしれない。でも、でもだよ。なら実写ってどうなのよ?

実写ではもちろんアニメの世界に入ることはできないので、どうなるかというとCGで特撮をおこしてその特撮メカに主人公たちが乗りこむことになる。それなら特撮愛を訴えろって話だし(しかし特撮愛だとどうしたって着ぐるみかストップモーションアニメにならざるを得ないわけだが)アニメの世界に入るという意味がまるでなくなってしまう。特撮は、むしろ特撮のほうがこの世界に侵入してくるものだろう。それでどうしたかというと主演の三人に乃木坂46のメンバーを揃えて……いやいや、だからそれはキャラクターが可愛すぎるとか、絶叫芝居しかない演技がどうだとか、そういうこと以前の問題なのであって、つまり乃木坂の人気者をあてとけばいいだろう(あるいは逆に、乃木坂にあてがう映像企画を探していた秋元康の毒牙にかかったのかもしれないが)という「こんなもんでよかんべイズム」、それこそが真の悪なのであり、そしてかぎりなく「アニメ的なるもの」にこだわりつづける偏愛に真っ向から対立するものではないか。「手を出すな」って言われてるのはおまえらだよ! 英勉と秋元康とソニーミュージック! そういうわけなので、もちろんアニメ的こだわりも偏愛も何もなくて、学校の規律を重んじる生徒会とゲリラ女子高生との戦いを描く女子高生ドタバタを描く映画となったのだった。

 

 

マンモス高校芝浜高校には四百二十九の部活、八十の同好会が存在し、その活動は混迷を極めている。道頓堀生徒会長(小西桜子)率いる大生徒会は彼らの勝手気ままな活動を監視し、部活動のコントロールをはかっている。目下のところ目の上のたんこぶなのが映像研。「学園の揉め事はもっぱら映像研が引き起こす」と言われているんだが、これが本当に「と言われている」と言われるだけなのが悲しい。映像研は「最強の世界を作りたい」とアニメの世界観にこだわる浅草みどり(齋藤飛鳥)と俳優夫妻の娘でカリスマ読者モデルでありながらアニメーター志願の水崎ツバメ(山下美月)、それにアニメには興味はないが金勘定に強いプロデューサー気質の金森さやか(梅澤美波)の三人組。アニメ研の上映会に潜入した水崎と二人が出会って云々というあたりの話は(TVシリーズでやったので)ざっくり流して、金森が取り付けてきたロボット研究会とのコラボ作品を作ろうとするのがメインストーリー。

 

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