柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『夜明けを信じて。』 「白人の金髪美女が怖くてやってられるか~♪ 」と、大川隆法作詞作曲の聞くに耐えない珍曲がかかりまくる大川隆法総裁の自伝的ストーリー……ってこの話知ってるぞ!

公式サイトより

夜明けを信じて。

監督 赤羽博
原作・製作総指揮 大川隆法
脚本 大川咲也加
撮影 木村弘一
音楽 水澤有一
挿入歌 千眼美子
出演 田中宏明、千眼美子、長谷川奈央、並樹史朗、窪塚俊介、芳本美代子、芦川よしみ、石橋保、柳憂怜

 

1991年7月15日、太陽会の巨大イベントが東京ドームでにぎにぎしく開催され、一条悟(田中宏明)の言葉を聞こうと日本中から多くの人が集まった。イベントが報じられると、そのニュースを聞いた人々はそれぞれに「一条くんは、やはり我々とは違う人間だった……」と昔を回想する。そんな形式で語られるのは徳島の片田舎から東京の名門大学に入学、そして商社で社長候補となるもあえて出世の道を捨てて衆中を救うために退社し……ってこの話知ってるぞ! そう、もちろんこの大川隆法総裁の自伝的ストーリーは、2年前、2018年のさらば青春、されど青春で語られている。なんでたった二年前の映画と同じ話をもう一度聞かされなければならんのだ? 実質的に二年前の映画のリメイク、違いといっては大川隆法作詞作曲の聞くに耐えない曲がかかりまくることぐらいだ。なんでまた……というところではたと気づいたんだが、これひょっとして『さらば青春~』で、大川隆法役を破門されたオタク息子こと大川宏洋が演じていたから? バカ息子が自分の分身を演じているのが気に入らないから映画を作り直し、場合によっては過去作を抹殺するところまで行くのかも? いやー、あまりにバカバカしい理由だが、たぶんそれだけの問題で、この世にも退屈なリメイク作品を見せられることになって、いやまったくもって実に徒労感がたまらなかったですよ……

 

 

太陽会の東京ドームイベントの日、裁判官の水瀬千晶(長谷川奈央)、関東テレビアナウンサーの立花美穂(千眼美子)、東鳳商事の日向(窪塚俊介)らはそれぞれの場所で、一条悟のことを思い出す。徳島の高校生一条悟は文武両道、勉強もできるうえに人望もある優等生で(ここらへんでもう歯がふわふわ宙を舞い出しますが頑張って押さえこんで!)、猛勉強のすえ見事「東名大」文化一類に合格する。同級生では法曹一家の娘であるマドンナ水瀬千晶に「彼女はぼくの理想の象徴なんだ」と唱える異様にキモい恋愛感情をいだき、ラブレターで詩を書き送るがふられる……というあたりの展開は『さらば青春~』とまったく同じなのでここでは繰り返さない。むしろここで見るべきは、二度くりかえされた中でディテールがどう変化しているかだろう。あきらかに同じ証言をくりかえすうちに話がスムーズになってしまう証言者効果は働いている。だが、それでも隠しきれないほころびは、大川隆法作詞作曲の珍曲以外にもあらわれている。

 

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