柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『Country Dreamer  -私の道、生きる!』 二人のアラサー女性が四国八十八ヶ所巡礼の中で「自分の道」を見つけだす。けれど、お遍路二人の「自分の道」ってなんなの?

 

 

『Country Dreamer  -私の道、生きる!』

監督・原作 浜野安宏
脚本・撮影 ふるいちやすし
主題歌 東亜樹
出演 一双麻希、風間晋之介、増本尚、油井昌由樹、倉石功、Yae、廖苡喬

 

あの「GACKTがいる!」でおなじみGACKT系スピリチュアル映画カーラヌカンのライフスタイルプロデューサー浜野安宏監督、待望の新作である。本作はほぼ自主映画のようだが、「ヌーベルバーグに続くNEW BREEZE CINEMAとしてムーブメントを引き起こす!」となかなか意気軒昂。舞台を沖縄から四国へ移し、二人のアラサー女性が八十八ヶ所巡礼の中で「自分の道」を見つけだす。これ、なかなかおもしろい話にもなり得たんじゃないかと思うのである。八十八ヶ所巡礼をめぐる過程でいろんな人と出会ってスピリチュアルに道を見出すという――たとえて言えばブニュエルの『銀河』のような――話になってもよかったはずなんだが、全体にいきあたりばったりのロードムービー感が強く、よくわからない台湾人のヒロインの起用といい、浜野監督の作家性と言えばそれまでだが、もう少しストーリーをきっちり組み立てても罰は当たらないのでは。あと「同行二人」の意味をだねえ……

 

 

能登半島のどこかでひっそり農業をやっている舞子(一双麻希)だったが、ある日婚約者が畑を相場の五倍の値段で売っぱらい、スポーツカーを買って農業なんかやめだと言い放つ(どうやら原発立地のためらしいことが示唆される)。激怒した舞子は車を飛び降り、「この美しい海を見て!」と絶叫する。「わたしはこの自然が好きなの!」するとどこからともなく聞こえてくる太鼓の音……にさそわれてそのまま日本海の荒波打ち付ける岩場にふらふらと入ってゆく舞子。いやそれは……と思っていたら足をすべらせて波にのまれて婚約者が差し伸べたても振り払ってそのまま波の下に……完!

さすがにここで映画が終わったらまずい。舞子は僧形の男に救われ「同行二人、はるかな山に向かい、山に入りなさい」とのお告げを受ける。気がつくと彼女はなぜか豪華な旅館で世話されており、徐々に回復してゆく。

一方台湾の道教寺院である台北指南宮にはもうひとりの主人公麗麗(リーリー、廖苡喬)がいる。大企業の社長である父は、道士からご託宣を得て、麗麗を跡継ぎにしようとする。だが麗麗はあまり嬉しそうではない。すべてが父の敷いたレールの上を歩くなんて……自分の足で歩きたい! だが、父は「おまえに苦労ができるわけはない」と歯牙にもかけない。

 

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tags: Yae ふるいちやすし 一双麻希 倉石功 増本尚 廖苡喬 東亜樹 油井昌由樹 浜野安宏 風間晋之介

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