柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『夏、至るころ』 「地域×食(+高校生)×映画」の必勝映画方程式に池田エライザを代入というまさかの裏技。なるほど、そこはかとなくただようBL臭は・・・

公式サイトより

夏、至るころ

監督・原案 池田エライザ
脚本 下田悠子
監督補 金田敬
撮影 今井孝博
音楽 西山宏幸
主題歌 崎山蒼志
出演 倉悠貴、石内呂依、さいとうなり、安部賢一、杉野希妃、高良健吾、リリー・フランキー、原日出子、後藤成貴

 

お久しぶり!な映画24区作品、しかも〈ぼくらのレシピ図鑑〉シリーズである。ずいぶん間が空いてしまったのでお忘れの人もいるかもしれないが、2017年の『36.8℃』にはじまるこのシリーズ、「地域×食(+高校生)×映画=?」という必勝の映画方程式により、高校生を主役に地元の食材を盛り込んだ地方食映画を量産しようという目論見。その第二弾がようやく登場したのである。ところが今回この方程式に「セレブ」を代入するというまさかの裏技を敢行。監督になんと池田エライザを迎え、福岡県田川市を舞台に映画を作ってしまったのだ。ちなみに原案も池田エライザなので、このそこはかとなくBL臭ただようストーリーも彼女のもの。なるほどそっちの方でいらっしゃいましたかね。

演出の方は意外と堅実、というか俳優出身の映画監督にありがちな俳優の芝居をじっくり見せ、空気感を大事にするタイプの素直な映画。自然映画は必要以上に長くなり、俳優は間をたっぷりとってよく泣く。そこら辺も含めまずまず無難に監督業をこなしてみせたと言えよう。

 

 

池田エライザの意志と美学が反映された映画になっているのは、何より舞台の田川市を完全に昭和レトロなすべてが茶錆びた町として統一して描いていることからも推察されるだろう。まあ単なるクソリアリズムだった可能性もあるけど! なんにせよ地域プロモーション映画としてこれを作られてしまった田川市の人々は内心複雑ではなかったのだろうかと邪推してしまう。あと、この映画で推されている地域の食が「パプリカのピクルス」だというのもなかなか複雑というか、さすがにもうちょっとなんかあっただろ、というか、セレブだからって規定演技の縛りをゆるくするのはいかがなものか、というか。まあ、総評としては『台風クラブ』にオマージュを捧げました!というところまで含めぴあフェスでかかりそうな青春映画、と申しましょうかね。

高校3年生の大沼翔(倉悠貴)と平川泰我(石内呂依)は親友同士。学校が終わるといつも二鶴食堂でうどんを食って一緒に帰る。毎日他愛ない会話に興じる二人は、祭りで叩く和太鼓の稽古に没頭していた。だが大学進学志望の泰我は勉強するために太鼓の稽古を抜けると言いだす。

「なんで大学に行くん?」
「安定のためかな」
「なんで安定したいん? 幸せってなに?」

 

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