柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『名も無き世界のエンドロール』 テレビの完結編を映画で!のパターンは見飽きるぐらい見たが、映画の続きはネットで!は新しいかもしれない。過渡期の珍品として記録には残しておきたい

公式サイトより

 

名も無き世界のエンドロール

監督 佐藤祐市
原作 行成薫
脚本 西条みつとし
撮影 近藤龍人
音楽 佐藤直紀
主題歌 須田景凪
出演 岩田剛典、新田真剣佑、山田杏奈、中村アン、石丸謙二郎、大友康平、柄本明

 

クリスマスイブ。サンタクロース姿のキダ(岩田剛典)はマコト(新田真剣佑)とドッキリ「プロポーズ作戦」の打ち合わせを続けている。マコトに「おまえにもドッキリを用意しているからな」と言われたキダ、「……あいつはずっとオレにドッキリをしかけ続けてきた……」と昔を回想する。2003年、子供時代によくふったコーラを開けさせられたのを皮切りに、握手すると電気ショックを食らわされたり、カラオケボックスに置いたコーラを持ち上げたらクラッカーが破裂したりと、やたらコーラ絡みのいたずらが好きなマコトにドッキリをかまされつづけてウン年のキダである。キダとマコト、それに転校生として出会ったヨッチ(山田杏奈)の三人は、いずれも親のいない同士ですぐに仲良くなり、男二人と女一人といういわゆる『冒険者たち』構成で微温的な関係をはぐくんでいる。

「親のいない俺たちは一人では立てないから、支え合って生きていくんだ」

 三本の柱ならしっかり立てる、と力説するキダなのだった。

高校卒業後、地元の自動車修理屋に就職したキダとマコト。ある日、無免許で犬をはねる事故を起こした驕慢な美女リサ(中村アン)がスポーツカーを修理してくれと言ってくる。ひとしきり車をチェックしたマコト、リサにつかつかと寄り、いきなり握りこぶしから目の前に花を突き出す。花を強引に手渡すと、その先からそろそろと万国旗を引き出して……「今はこれが精一杯」ってか!? 「食事にでも行きませんか?」と誘うが、「冗談じゃないわよ」と切り捨てられる。去ってゆく女を見送ったマコト、「あんな女に見合う相手は……」といきなり修理屋をやめ、姿をくらます。

二年後、闇社会にも通じる輸出業者川畑(柄本明)のもとにやってきたキダ。マコトの消息を教えて貰うかわりに「交渉屋」として働くことになる。わりと抑えめの柄本明節で、

「この業界では、きみみたいに正直な人間は珍しいのでね」

 とか言われて「交渉屋」として闇社会の揉め事を解決するキダなのだが、映画でみるかぎり暴力で脅して言うことをきかせる人のようにしか見えなかったよ。で、二年ぶりに会ったマコト、殺風景な四畳半暮らしで、きりつめまくって四千万円の金を貯めたという(スポーツバッグに札束を放り込んだタンス貯金!)。なぜそんなに必死なのか?

「リサにふさわしい人間になるためだよ」

 

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