柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ブレイブ-群青戦記-』 名も知らない高校生俳優たちが「死亡フラグ」を回収しては死んでいくクリシェのくりかえしを見せられる二時間。既視感だらけで、いったい何を見ろと……

公式サイトより

書籍版シリーズ第8弾『皆殺し映画通信/地獄へ行くぞ!』発売
『皆殺し映画通信/地獄へ行くぞ! 』発刊記念LIVE!のお知らせ

ブレイブ-群青戦記-

監督 本広克行
原作 笠原真樹
脚本 山浦雅大、山本透
撮影 佐光朗、的場光生
音楽 菅野祐悟
主題歌 UVERworld
出演 新田真剣佑、山崎紘菜、鈴木伸之、渡邊圭祐、濱田龍臣、鈴木仁、飯島寛騎、福山翔大、水谷果穂、宮下かな子、長田拓郎、足立英、三浦春馬、松山ケンイチ

 

書籍版シリーズ第8弾
『皆殺し映画通信/地獄へ行くぞ!』
4/9
発売

 

よく日本映画のクリシェとしてあげつらわれる、たとえばチャンバラで切られたやつが駆けつけた友人に「……あとのことは頼む。いっしょに食った飯、美味かったぜ……」と言いおいて事切れると、彼を殺した相手はその愁嘆場のあいだずっとそこで待っていてくれて、切られたやつががくっと死に際にたてる音をたてて死ぬと、もうひとりが「うおおおおおーっ」と叫びながら突進する――みたいな奴。この映画、驚いたことに全編それ。最初から最後までこのクリシェのくりかえしで、「からあげが美味かった」だの「お母さんにもう一度会いたかった」だの言い残して次々に死んでゆく。名も知らない高校生俳優たちが延々と「死亡フラグ」を回収しては死んでいく姿を見せられる二時間。クライマックスとなる最大のアクション場面がここまで既視感だらけで、いったい何を見ろと……

 

 

舞台は愛知県名古屋市、全国レベルのスポーツ名門校男女共学の星徳学院。校舎の中庭には注連縄を張った謎の巨大岩がある不思議なロケーション。ある嵐の日、巨大岩から謎の光が立ち昇る中、不破(渡邊圭佑)が屋上から飛び降りて姿を消す。それから一年後、生暖かい冬の日、空から血の色の雨が降り、大量のセミがいきなり羽化する異常事象とともに、岩から光が立ち昇る。直後、足軽が校内に攻め入ってきて、何が起こっているのかさっぱりわからない生徒や教師を次々に惨殺する。それは戦国時代。足軽は織田信長の配下だったのである(まあそういう映画だからということで、以下ツッコミは無用に願います)であった。いったい何が起こっているんだ!と困惑していた生徒たちだが、全国レベルのアスリートたちは気を取り直して反撃する。しかし剣道部員が竹刀で戦ってるのはどうかと思ったぞ。皆殺しにされるかと思いきや、一団を率いる簗田政綱(一人だけ面頬をつけて顔を隠してるから、怪しいとすぐにわかりますね!)は、松平元康(三浦春馬)の軍勢が近づいてきていると知ると、人質をとって撤退する。

今度は松平元康の軍勢にとらわれた高校生たち。彼らを見ていた戦国時代オタクの弓道部員、西野蒼(新田真剣佑)は、具足や会話から自分たちが戦国時代にタイムスリップし、今が桶狭間の戦い前夜であることを見抜く。なんと驚くべき推理力。そう言えばこの学校が建っているのは桶狭間古戦場の近くだ! 西野は剣道部の主将松本考太(鈴木伸之)とともに松平元康に直談判、大高城への「兵糧入れ」を控えている松平に、丸根砦への牽制攻撃策を進言する。史実においては成功しているとわかっている作戦を献策するというわけだ。ところが松平からは、ならば高校生軍団で丸根砦を攻略してみろと言われる。織田軍の兵士500人がこもる城に、非武装の高校生が立ち向かえるのか!? アスリート高校生たちは知恵と未来の知識で、精鋭の戦国侍と戦えるのだろうか?

まあ基本的にはこの映画、運動能力も体格も圧倒的に優れているはずの現代のアスリートと、人殺しになんのためらいもない戦国時代の武士と、まっこうから戦ったらどちらが勝つのか?という思考実験なのだと思うが、そもそもそんなの勝負になるわけないだろ!

 

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