柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『美しき誘惑~現代の「画皮」~』  またしても週末興行第一位の幸福の科学映画! しかし映画は歴史に残るレベルの空疎なCGバトルと大川隆法のミソジニーと非モテ思想

公式サイトより

 

美しき誘惑~現代の「画皮」~

製作総指揮・原作・主題歌作詞作曲 大川隆法
監督 赤羽博
脚本 大川咲也加
撮影 木村弘一
音楽 水沢有一
出演 長谷川奈央、市原綾真、芦川よしみ、モロ師岡、矢部美穂、中西良太、デビット伊東、千眼美子、杉本彩、永島敏行

 

2021年初の幸福の科学映画、一年前のこの時期に公開された心霊喫茶「エクストラ」の秘密以来、またしても週末興行第一位を獲得! 二年連続パンデミックど真ん中緊急事態宣言中に公開をぶつけて興収一位を獲得とは、単なる偶然と言ってすますには強運すぎる邪教の力。じゃあ肝心の中身のほうは……というと最近のハッピーサイエンス映画の二枚看板の一人、長谷川奈央を主役に抜擢して顔は美しいが心は醜い女の恐ろしさを描く。一方千眼美子が演じているのはの田舎の純朴な幼馴染役、というあたりに製作総指揮の人の女性観がうかがえるような。映画のクライマックスは一大CGバトルとなるのだが、この場面の空疎さは歴史に残るレベル。今回ばかりはドラ息子殿の不在を意識せずにはいられなかった。

 

 

山本舞子(長谷川奈央)は天の川銀行の副頭取秘書、評判の美人ということで社内からも取引先からも求婚者が引きもきらないモテっぷりだが、「わたしはナンバーワンをめざすの」と歯牙にもかけない。実は彼女、銀座のクラブZでホステスとして働いている。昼は清楚な重役秘書、夜は妖艶なホステスというわけだ。なぜわざわざそんなことをしているかといえば、それは有力な男を見つけるため。店には週二日しか出ないが、男をたぶらかして貢がせまくっている。そんなことをして面倒なことにならないのか? 当然ながら銀行の取引先の重役がお店に来たりしてトラブルはひきもきらずだが、そこで彼女の必殺技が登場。相手の肩を二回叩いてエネルギーを奪ってしまうのだ。エネルギーを奪われた相手は気を失い、やりすぎると痩せこけて骨と皮のゾンビになって死んでしまう。『スペース・バンパイア』オマージュか! いや残念ながらそんなにいいもんじゃありません。

そうやって網を張っていると、見事罠に飛び込んできたのが徳島県選出の国会議員、元内閣総理大臣の塩村歩(永島敏行)。息子で秘書をしている太郎(市原綾真)を連れて来店したのである。父の地盤をついでの立候補を検討しているという太郎、出馬すれば当選まちがいなしそして末はイケメンなので総理大臣候補というサラブレッドである。そんなかんたんに行くのか?と言いたいところだが別に幸福の科学映画だからというだけでなく現実の日本政治においてもその程度のような。そんな小泉いや塩村太郎もたちまち舞子の美貌と強調される胸元にメロメロだ。「収入」「見た目」「金」みたいな男の価値ランキングを作って交際相手を管理している舞子も塩村をごぼう抜きトップに据えてロックオン。

地元徳島の新興宗教「未来の科学」の支援も得て無事当選した太郎、るんるんで舞子に連れられて「天狗稲荷」なる神社に参拝する。いきなり頭痛を覚えて倒れたりする太郎、神社内の茶屋の店員から、そこが九尾の狐を祀っている神社であることを教えられる。藤原薬子の伝承を語る店員によれば、九尾の狐は権力者に取り付き、国を破滅させる妖怪なのである。

 

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