柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『青葉家のテーブル』CMからの劇場用映画はいくらもあるとはいえ、ECサイトのウェブムービーとなるとさすがに衝撃。映画とウェブムービーのあいだに違いはない時代になったのかも

公式サイトより

 

 

青葉家のテーブル

監督 松本壮史
脚本 松本壮史、遠藤泰己
撮影 後藤武浩
劇中歌 トクマルシューゴ
出演 西田尚美、市川実和子、栗林藍希、寄川歌太、忍成修吾、久保陽香、上原実矩、細田佳央太、片桐仁

 

ECサイト〈北欧、暮らしの道具店〉発! これまでもいろんな映画を発見してきたけれど、これはちょっと新しい。Eコマース、すなわち大手ネット通販サイトが本作の企画元である。サイトで商品の宣伝を兼ねて発表していたショートムービー、『青葉家のテーブル』の好評を得て、ついに劇場へ進出! まあCMからの劇場用映画自体はいくらもあるとはいえ、それがECサイトのウェブムービーとなるとさすがに衝撃。もはや映画とウェブムービーのあいだに違いはない時代になった象徴と言えるかもしれない。

さて青葉家で「北欧、暮らしの道具店」の取り扱い商品に囲まれて量産型スールキートスみたいな丁寧な暮らしをつづける家族の面々とは、シングルマザーの青葉春子(西田尚美)、その中学生の息子リク(寄川歌太)、春子の飲み友達めいこ(久保陽香)、その恋人の作家ソラオ(忍成修吾)の四人暮らし。なんでこんな縁もゆかりもない四人がシェアハウスで同居しているのか?という謎については特に説明なし! てか「青葉家のテーブル」自体映画にはほとんど出てこないではないか。なんなのか?と思ったら主人公はウェブ版には出てこない春子の元親友でカリスマシンママの国枝知世(市川実和子)とその娘優子(栗林藍希)のほうで、テーマは青春の悩みみたいな……丁寧な暮らしはどこに行ったんだかわからないけど、あまり宣伝臭がしないのはいいのか悪いのか。

 

 

 

毎朝にぎやかな青葉家に今日から新たなメンバーがくわわる。春子の親友の娘、高2の優子が、長野から美術予備校の夏期講習を受けるために上京、二週間のあいだ居候することになったのである。優子の母知世は長野でこだわりの中華料理店「満福」を経営しているカリスマで、優子はそんな母親がちょっと苦手なのである。ところでこの知世の店、映画内では「町中華」と紹介されるのだがそれは絶対に違うだろう。そして海外のドキュメンタリー(ネットフリックスの食番組だかなんか)で紹介されるほどのカリスマであるらしい知世が何のカリスマなのかどうもよくわからないままなのだ。たぶん「丁寧な暮らし」のカリスマということなんだが、それが明確に言語化されることはない。ともかくそんな母の「正しさ」に息詰まる思いを抱えながらも、困ったときには母の権威に頼りがちな優子なのだった。

そんなわけで美術予備校に出かける優子、同級生にはデッサン技術もずば抜けたイケメンの瀬尾(細田佳央太)や紫の髪をしたアーティスト志望の与田あかね(上原実矩)らがいる。イケメンとは親世代の人気バンドだったチョコレート・スリープオーバー(どうやら渋谷系のネオアコバンドのようなんで、各自お好きなバンドをイメージしてください)の話題で仲良くなり、同じく地方出身者とのあかねには「一緒にzine作る?」と誘われて舞い上がっている優子である。

 

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