柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『キネマの神様』 沢田研二が“志村ぶり”をするという事態が発生。映画愛気分にひたってればそれでよし、というメッセージを受け取りました!

公式サイトより

キネマの神様

監督 山田洋次
原作 原田マハ
脚本 山田洋次、朝原雄三
撮影 近森眞史
音楽 岩代太郎
主題歌 RADWIMPS feat.菅田将暉
VFX監修 山崎貴
出演 沢田研二、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎、北川景子、寺島しのぶ、小林稔侍、宮本信子、リリー・フランキー、前田旺志郎、志尊淳、松尾貴史、広岡由里子、原田泰造、片桐はいり、曽我廼家寛太郎

 

さてこの映画、当初主演予定だった志村けんが2020年3月、新型コロナ感染症により急死するというショッキングな事件に見舞われ、急遽沢田研二を代役として製作、完成にこぎつけたものである。完全に志村けんにあてがきされた役なので、沢田研二が“志村ぶり”をするという事態が発生してしまった。これは相当に気持ち悪いし、あきらかにそのせいで不愉快度が増している部分もある。というのもこの主人公、アル中で競馬マニアの駄目男だがどこか憎めない……という役どころのはずなのだが、その「どこか憎めない」部分を志村けんの個人的魅力で補おうとしていたふしがある。そこでキャストがまるで百八十度方向性の違う役者になってしまったんだから、なんらかの手当をしなきゃならなかったんじゃないかと思うんだが、やってるのが“志村ぶり”だけでは……しかも若いころを演じているのが菅田将暉ということで、若い頃から一貫して飲む打つ買うの三拍子揃ったクズのイケメンということになってしまった。しかし菅田将暉のクズ男ぶり、最近ますます磨きがかかってきて、もうなにやってもクズ男にしか見えなくなってきた。こいつが本当にダメ男なんだが、それでも「映画の才能があるから……」とまわりからもてはやされているのだが、映画を見るかぎり何が才能なのかさっぱりわからないのである。

 

 

どんな映画にもその一本を象徴する場面というのがあるものだが、この映画だと回想で登場する松竹大船撮影所での撮影現場。スター女優桂園子(北川景子)から「自分たちの演技をちゃんと見てくれない」とぼやかれた名監督出水宏(リリー・フランキー)が、俳優はいい演技をしようとか無駄なことを考えるから作為が見える(だから子供はいい)とぼやき(「出水宏」のモデルはもちろん清水宏監督である)、

「はいはい。では国産の名優たちのクサくて不自然な芝居を見せてもらうとしますよ」

 と憎まれ口を叩くのである。それを見た瞬間、「そのクサくて不自然な芝居をなんとかしろよリリー・フランキー!」と反射的に思ってしまったのだが、もちろんリリー・フランキーはここに出ている俳優陣の中では全然マシなほうであって、それ以外の俳優たちの不自然な台詞回しは本当に耐え難いものがある。で、その耐え難い台詞でつづられるクズ男物語というのが……

 

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