柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『宇宙の法―エローヒム編―』 アニメとしての出来には疑問符がつけられることの多い幸福の科学アニメだが、今回は本当にアニメが安い! 

公式サイトより

宇宙の法―エローヒム編―

原作・製作総指揮 大川隆法
監督 今掛勇
脚本 大川咲也加
音楽 水澤有一
主題歌 竹内久顕
出演 千眼美子、大原さやか、新井里美、掛川裕彦、高橋広樹、笠間淳、置鮎龍太郎、八代拓、村瀬歩、伊藤美紀、銀河万丈

〈宇宙の法〉シリーズはおなじみアニメーション映画で語られる壮大な幸福の科学的地球史である。前作宇宙の法 黎明編では三億三千万年前、地球神アルファが支配する地球へのレプタリアンの侵入と同化が描かれた。で、そのレビュウで「たぶん次は一億五千万年前あたりで千眼美子が声優をつとめるヒロインが出てくるんだと思う」と名推理を披露しておいたわけだが、その作品がこれである。まあ、馬鹿でもわかる展開なんで、別に誇ってるわけじゃないよ。舞台は一億五千万年前の地球。地球神の本体意識がひさびさに地上に降臨なさったのであった……というわけで毎度おなじみスカスカのアニメが繰り広げられる。もともとアニメとしての出来には疑問符がつけられることの多い幸福の科学アニメだが、今回は本当にアニメが安い! テクスチャを貼り忘れた3Dモデルを背景に静止画のキャラが口だけ動かしている……みたいなアニメが延々と続く。

もうひとつ重要なことがある。『~黎明編』はタイトルからもわかるように(?)手塚治虫の霊指導による手塚リスペクトすんなよふざけんなアニメであったが、本作はMCUの影響を色濃く受けたマーベル風(?)アニメなのだ。なんとスタンリーマン(声:銀河万丈)という老科学者のキャラクターまで登場する。まさかのスタン・リー、他社映画へのカメオ出演である(さすがに顔までは似せてません)。大川総裁『エンドゲーム』見たのか……よもや『スタン・リーの霊言』とかあるまいな……と思ったらしっかりありましたよ。「スタン・リーの守護霊」にしてたり、「原作霊言」「助言」とか微妙にぼやかしてるあたりが弱腰で、大川総裁と言えどもやっぱりDi$ney様は怖いのかなあ。

 

 

さて、一億五千万年前の地球。地球には信仰レプタリアンやケンタウルス座アルファ星をはじめとする星々からの避難民、移民が多数暮らし豊かな社会を築いていた。というとダイバーシティあふれる社会のような気がするが、「ただし、地球神を信仰するものに限る」からね! その地球に向けて、ケンタウルス座ベータ星から巨大隕石爆弾が発射される。暗黒物質(ダークマター)製の隕石爆弾は、地球宇宙軍の攻撃をものともせずに衝突軌道を直進。もはやこれまで……と思われたとき、どこからともなくあらわれた光が隕石爆弾を一撃で消滅させてしまう。その光の中からあらわれたのは謎の美少女!

「あ、あ、あーああ、あ、あ、あーああ、あ、あ、あーああ、ああー!」

来ました最近の幸福の科学映画唯一の楽しみである大川総裁作詞作曲の謎曲(千眼美子歌唱による「ヤイザエルのテーマ」)。「きたー!きたー!なんのためにきたのかー!」うーんおまえさんにわからないんだったら誰にもわかんないよ! 彼女の名はヤイザエル(千眼美子)、ベガ星からやってきた惑星連合軍総司令官である。彼女は地球神エローヒムの救援要請に応じ、ベガから派遣されてきたのである。星を離れるにあたって、女王(伊藤美紀)からは自在に姿を変える宝刀、変化の鏡、鉱石(いくら削り取っても減らない無限の立方体――コズミックキューブかな?)の三種の神器を託されてきた。キューブを地球人の老科学者スタンリーマンにわたすと、持ち前のまんが力で次々に武器を開発してしまうのだった。「正義のため以外に戦うことはありえない」と断言する武闘派ヤイザエル、根性なしの地球人たちにスパルタな軍事訓練を施しつつ、「地球的正義とはなにか」についてエローヒムから教えを乞いたいと願っているのだった。

 

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