柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ペルセポネーの泪』 前澤友作氏は宇宙に行くが、剛力ちゃんは長野で延々と暗い顔をして地方ドサ回り。なんでこんなことになってしまったのやら

公式サイト

ペルセポネーの泪

監督 磯部鉄平、源田泰章
原作 源田泰章
脚本 細川博司、永井和男、磯部鉄平
撮影・照明 曽根剛
音楽 kafuka
主題歌 絢香
出演 渡部秀、剛力彩芽、橋本マナミ、渡辺裕之、勇翔、岩永洋昭、根本豊、辻凪子、白石優愛

前澤友作氏は宇宙に行くが、剛力ちゃんは長野に向かう。信越放送七〇周年記念、オール千曲市ロケの長野映画のヒロインとして、人知れず信州長野に赴いて新作映画を作っている剛力彩芽嬢である。横浜出身の剛力ちゃんが地縁もなさそうな土地で地方映画……都落ち感が半端ないが、なんでこんなことになってしまったのやら。しかもこれどういう企画で作られたのかわからないのだが、妙に暗くて救われないファンタジーなのである。結果、基本暗くて神秘的な美少女しかできない剛力ちゃんが延々と暗い顔をして地方ドサ回りという、見るからに救われない映画になってしまっていてですね、信越放送さんもこんなことでよかったのか本当に問いかけたい……

 

 

長野県のさる農家の屋根の上で剛力ちゃんが昼寝していると(!)そこに夫の風太(渡部秀)が帰ってくる。東京でのブラック労働に疲れ果てた風太は、会社をやめるとスローライフを夢見て長野にやってきた。そこで足湯に入っているときに偶然出会った男大倉(岩永洋昭)に紹介された農地つき農家を購入、そのまま農業に身を投じるも、移住して三年、いまだ芽が出ないままである……っておまえそもそも農業舐めてるだろ! で、そんなデモシカIターン農家のところに、いつの間にかどこからともなくやってきたミノリ(剛力彩芽)が居着き、二人はそれなりの幸せを築いていたのだった。

しかしそんな風太、実は当地に巣食うヤクザだった大倉から借りた金の返済を迫られている。大倉は田舎暮らしに憧れるカモを見つけては使えない農地を売りつけ、数年で土地をとりかえしてまた売るという詐欺スキームを開発していたのだった。だから長野は都会者をカモる怖い土地だ、みたいなストーリーで地方映画としていいのかっていう。しまいに風太、「いいバイトがあるから来い」とか言われて夜中に呼び出され、大倉の借金を返せなかった男を埋める手伝いをさせられてしまう。いよいよ進退窮まった……

と、そんな彼を見かねたミノリがいきなり「お金に困ってるんだったらこれを使って」と「高価そうな」指輪を渡す。別に金に困ってるとか口にしたわけじゃないんで超能力としか思えない剛力ちゃんに、「へ?」と返す風太。この映画、やたら「へ?」という相づちが多くて、このあとも延々風太は「へ?」と言い続けるんですが、面倒なんで省略します。

 

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