『弟とアンドロイドと僕』 トヨエツ、トヨエツ、トヨエツ無双。全力で存在感のない男を熱演する豊川悦司から目が離せない90分
→公式サイトより
『弟とアンドロイドと僕』
監督・脚本 阪本順治
製作総指揮 木下直哉
撮影 儀間眞悟
音楽 安川午朗
出演 豊川悦司、安藤政信、風祭ゆき、本田博太郎、片山友希、田村泰二郎、山本浩司、吉澤健
主演豊川悦司。主人公の桐生薫(豊川悦司)は、孤独なロボット工学者。子供の頃からずっと、自分が存在している実感を抱けないまま生きてきた……ちょっと言わせてもらってもいいですか? 豊川悦司より存在感のある人などこの世にいるわけがない! トヨエツが存在感のない人間とかミスキャストにもほどがあるっつーの!「でかい男がいきなり後ろに立ってて驚く」とかいうセリフがあるのだが、フードをかぶったトヨエツが黙って近づいてきたらそれもうホラーだって! ともかくそんな感じにやたら圧をかけてくるトヨエツ、トヨエツ、トヨエツ無双。そんな感じで全力で存在感のない男を熱演するトヨエツから目が離せない90分。いろいろ間違ってるような気がするが、飽きないのは事実である。
監督もつとめる阪本順治のオリジナル脚本作。製作は配給も兼ねるキノフィルムズで、製作総指揮は社長木下直哉ということで、キノフィルムズの直営館kino cinemaでの公開になる。いわば木下直哉の自主映画のようなものなので、阪本順治に時折見受けられるトンチキ映画を誰も止められなかったのであろう。
雨。この映画のあいだずっと、激しい雨が降っている。レインコートにフードをかぶった大男、桐生は大学教授である。左足だけでけんけんしながら教室にやってくると、一言も口をきかずに黒板に数式を書きなぐり、黒板がいっぱいになると「いつものことですが、字が汚くてごめんなさい」とだけ言いおいて教室を出てゆく。なんの授業なのかもわからない状態に困惑しきりの学生たち。乱雑な研究室には人間の腕そっくりのロボットアームが置かれている。後期のシラバスを提出してないとおかんむりの学部長(本田博太郎)は、
「きみは道路のヒビ割れを見つけるロボットを開発するはずだったろう。なんでこんな気持ちの悪いものを作ってるんだ」
とお小言をくれるばかり。しまいに、
「わたしの娘婿が専門家だから見てもらったらいいんじゃないか?」
とあからさまに精神的問題を抱えてるんじゃないかとほのめかしてくる。失礼すぎるのは学部長だけじゃなく、用務員まで、
「まだお一人なんですよね? 結婚すればもうちょっとまともになるんじゃ……」
みたいな余計なお世話にもほどがあることを言ってくる。どいつもこいつもおせっかいすぎるんじゃー。というかみんながトヨエツのこと気にしすぎなんだよ! まあこんだけ存在感あればさ……
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