柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『劇場版1979はじまりの物語~はんだ山車まつり誕生秘話』 一人の男の「半田をひとつにしたい」という思いからはじまった…… これが半田市政の闇だったのか!

公式サイトより

劇場版1979はじまりの物語~はんだ山車まつり誕生秘話

監督・脚本 作道雄
プロデューサー 森内保雅、瀬木直貴、作道雄
撮影 橋ヶ谷典生
音楽 畑裕也
出演 中山真人、中村優一、平野泰新、原田篤、伊藤精崇、南部隼人、宮地真緒

知多半島の中部に位置する愛知県半田市には、市内各地区に31輌もの山車を擁している。5年に一度、31輌が一堂に会する日がある。愛知県随一の規模を誇る「はんだ山車まつり」だが、その祭りの歴史は意外と新しい。はじまりは1979年、一人の男の「半田をひとつにしたい」という思いからはじまった……

当時、半田市内の政治状況は二分されており、対立や論争が日常的に絶えなかった。それを憂いた半田青年会議所の酒井義弘(38)が企画したのが山車まつりであったのだ……というのだが、じゃあその政治状況ってなんなんだよ! この映画、地方映画にありがちな配慮からか、気になる箇所がボカされてしまっており、あとからいろいろ調べさせられてしまった。そもそもこの映画、どういうものなのかというと半田市を中心にサービスを提供するケーブルテレビ局CACによる連続ドラマの劇場向け再編集作品。監督・脚本の作道雄はもともと瀬木直樹のスタッフで『いのちスケッチ』の脚本も担当している。

主人公の酒井を演じた中山真人をはじめ主要キャストは「地域キャスト」として俳優経験のない地元民を集め、それを半田市PR大使でもあるボーイズグループのメンバー平野泰新らをはじめとするプロの俳優が支えるという構成。と聞くといったいどんな棒読み合戦がくりひろげられるのかと身構えるところだが、あにはからんや芝居に関しては「地域キャスト」の面々は台詞回しこそ独特だったが無理をしない分安心して見られ、むしろ敵役である香川を演じる中村優一がオーバーアクトにつぐオーバーアクト、変顔連発でいちばん変な人だった。なんでこんなことに……

 

 

1979年4月30日、山車祭り5日前、酒井(中山真人)は参加を渋る板山地区大湯組の山車組を説得している。どうしても説得に応じてくれない山車組に、もはやこれまで……となったところで話は七ヶ月前に遡る。いきなりJC会長に立候補して無投票で代表に選ばれた酒井(中山真人)は「半田をひとつにしたい」「旧弊打破」とぶち上げるが、香川(中村優一)は「人望もアイデアもないおまえに何ができる!」と変顔で嫌味をぶつける。「どうせ竹内市長を攻撃して市長になろうって腹なんだろう!」と言われて「いやそんなつもりはない。俺はただ半田をひとつにしたいだけで……」と答える酒井なのだが、そこらへんが「二分された政治状況」ってやつなのか。だったらそこをちゃんと教えてくれないとね……

酒井はさっそく実直な山田(伊藤精祟)を誘って「31輌の山車を勢揃いさせる山車まつり」の企画を披露する。酒井役の中山真人、演技らしい演技はほとんどなくて無表情からいきなりセリフが飛び出してくる感じなのだが、逆に熱いヤンキー風に周囲を巻き込んでいくキャラクターだととんでもなくうざい映画になっていたと思われるので、これで良かったのではないか。そして中京商業野球部で春の選抜高校野球準優勝を経験しているスター選手だったという酒井、どうやらそういうタイプの人間だったのではないかと思われるからなおさらだ。なお、本作、再現ドラマの合間に本人が登場して当時のことを回想するドキュメンタリー部分がはさまるのだが、地元実業家持ち上げっぷりがいかにもローカルテレビである。

 

(残り 1838文字/全文: 3344文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

tags: 中山真人 中村優一 伊藤精崇 作道雄 南部隼人 原田篤 地方映画 宮地真緒 平野泰新 森内保雅 橋ヶ谷典生 瀬木直貴 畑裕也

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ