柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『シン・ウルトラマン』 いろいろ言いたいことはあれど、日本一のウルトラオタク庵野秀明がその実力を見せつけた一本。今後の庵野監督に期待したいことはただひとつ。それは・・・

公式サイトより

シン・ウルトラマン

企画・脚本・総監督 庵野秀明
監督 樋口真嗣
撮影 市川修、鈴木啓造
音楽 宮内國郎、鷺巣詩郎
主題歌 米津玄師
出演 斎藤工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、田中哲司、西島秀俊、山本耕史、岩松了、嶋田久作、益岡徹、長塚圭史

シン・ウルトラマンとはなんなのか? それが“ウルトラマン”なるものの脱構築であればよかったのだが、要はかつてテレビ放映された円谷プロ製作の特撮ドラマ『ウルトラマン』を2022年現在のSFXを使って再現したリメイク作品ということである。そのことにはなんの問題もない。問題があるとすれば、その「再現」がいったい誰に向けられたものなのか、という点である。『ウルトラマン』は子供向け特撮番組だったのだから、当然『シン・ウルトラマン』も子供向けになるのだろうと思っていた。ところがぎっちょん、この再現はオタク、リアルタイムで『ウルトラマン』を楽しんでいたアラカンの怪獣ファン向けの作品だったのである。そうなるであろうことはわかっていた。だって、これを作っているのは庵野秀明、我々世代の特撮オタクのチャンピオンなのだから。当然あらゆるオタクネタを練りこんで、誰にも文句を言わせないオタク作品を作ってくるのだろう。それはもちろんそれでいいのだが、じゃあ今の子供に向けてアピールするものは……と見ながら思っていたのだが、いろいろ調べるに、どうやらこれは最初から50代以上の特撮オタクをターゲットにして作られた映画であるらしい。え、そうなの? それは……その意味ではウルトラQの怪獣から巨大フジ隊員まで意図は120%実現されていると言える。だけど、本当にそれで良かったのか? (たとえ建前だけでも)子供に向けて作られない『ウルトラマン』って、それはなんなのか?

 

 

二時間の映画に出てくるメインの怪獣・宇宙人は五体(それぞれ禍威獣、外星人と呼ばれている)。映画はほぼ『ウルトラマン』のエピソードを五本つなげたようなかたちで出来上がっている。ネロンガとの戦いでウルトラマンがやってくると、その際逃げ遅れた子供を救おうとして死んだ「禍特対」の神永(斎藤工)に乗り移って、以後禍威獣出現→混乱→ウルトラマンに変身して退治がくりかえされる。出てくる禍威獣はネロンガ、ガボラ、ザラブ星人、メフィラス星人、そしてあのヤバいやつ。ストーリー上、「ネタバレ」とされる事件があって、それについてはここでも詳しくは触れないが、「ザラブ星人」と「メフィラス星人」が出てきて、ストーリーがほぼオリジナルのリメイクなのだから、そりゃあそうなるに決まっているのであった。なので以下、いくつか気になった部分のみ突っ込んでおく。難癖ともつかない細かな突っこみばかりが並ぶことになるのだが、それもこれも同年輩のウルトラじいさんのぼやきとして笑って流していただければよろしい。

 

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