柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『君たちはまだ長いトンネルの中』 「note」の消費増税反対漫画が実写映画化。その中身は、キレ散らかす狂人女子高生が暴れまわり、相手の主張にいっさい耳を傾けず、ひたすら「論破」

公式サイトより

君たちはまだ長いトンネルの中

製作総指揮・監督・脚本 なるせゆうせい
原作 消費税増税反対botちゃん
経済監修 藤井聡
制作プロデューサー 堀内博志
撮影監督 佐藤雅樹
出演 加藤小夏、北川尚弥、定本楓馬、蒼木陣、高橋健介、川本成、萩野崇、あまりかなり、モト冬樹、かとうかず子

 

原作:消費増税反対botってなんだよ! と思ったら、noteで公開されていた消費増税反対漫画『こんなに危ない!? 消費増税!』(『私立Z学園の憂鬱―消費増税を凍結せよ!』)が原作であった。 その中身はというと反緊縮派女子高生が、財務省プロパガンダを唱える財政規律派をどんどん論破するという代物。

 

→私立Z学園の憂鬱2 

 

で、それを映画化してみると? できあがったのは緊縮派の主張を聞くといきなりキレ散らかす狂人女子高生が暴れまわるディスカッション映画である。ディスカッションといっても、彼女は相手の主張にいっさい耳を傾けずひたすら「論破」するだけなので、twitterの説教を延々聞かされてるみたいなものになってしまった。実写映画にする意味は……?

 

 

 

反緊縮派女子高生高橋アサミ(加藤小夏)は、今日も政経の授業中に大胆な早弁を実行中。教師(あまりかなり)がアベノミクスの「三本の矢」について説明しているが、もとより聞く気などない(いまどきの高校って、こんな授業あるの?)。教師に不遜な態度を咎められたアサミ、「だって結局失敗した政策のことでしょうが」と一蹴する。「もちろんアベノミクスが完全な失敗だったわけじゃないわ。“大胆な金融政策”で景気を刺激したとこまではよかったけど、そのあと消費税を上げちゃった……消費を増やしてデフレを脱却してからにすればよかったのに」と一気にまくしたてて授業を破壊してしまったアサミ、学校が終わると世話になっている蕎麦屋夫婦(モト冬樹、かとうかず子)のところに行ってぼやく。蕎麦屋はコロナ禍で手ひどいダメージを受けたうえ、もともと昼間だけの営業だったので時短営業の協力金ももらえず、店を閉めるしかないか……と思いあぐねている。アサミはシャッター商店街の活性化を考え、商店街の夏祭り企画を盛り上げるべく、地元紙に勤めているOB(高橋健介)に会いにいく。

なるほどなるほど。じゃなくてここらへんが問題なところで、つまり反緊縮派女子高生、マクロ経済についてはいくらでも語れるんだけど、それとミクロはまた別。マクロ経済では蕎麦屋は救えないのだ。蕎麦屋を救うためには、これまで百万回見てきた「祭りで盛り上げる」という前近代的祈りに頼らなければならないのだ。しかも新聞やらテレビやらと反緊縮派女子高生みずからが「信用できない」という旧来メディアに頼るかたちで。ネットでどんなに真実を知っても、映画になると結局お祭り頼み。ある意味、ネットリフレ派の最大の弱点を露呈してしまっているような。

 

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