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「ノンフィクションの筆圧」安田浩一ウェブマガジン

【無料記事】沖縄にも保守系の新聞は存在した

 沖縄の新聞は偏向している──。

 そうした物言いを目にする機会が増えてきた。

 昨年、「偏向」を理由に、「沖縄の新聞はつぶさないといけない」と自民党の学習会で発言したのは作家の百田尚樹氏だった。

 最近では自民党の神奈川県議・小島健一氏による「基地外」発言が物議を醸しているが、同発言に続ける形で、やはり「沖縄には明らかにおかしな新聞がある。本当に潰れた方がいいと思う」などと持論を展開している。

 もちろん、いまに始まったことではない。

 ある沖縄紙の記者は私の取材にこう答えた。

「結局、いつだってそうなんです。沖縄で何か問題が発生し、それが政府の思惑通りに進まないと、必ずといってよいほど同じような言説が流布される。つまり、自らの危機感を沖縄の新聞批判にすり替えることで、民意を矮小化するという手だてです」

 相次ぐ米軍兵関連の犯罪、地元の反対によって膠着状態が続く辺野古新基地建設問題は、まさに政府の「危機感」とつながる。米軍属による「死体遺棄事件」を「最悪のタイミング」と評した政府関係者がいたことなどは、典型的な事例であろう。

 だからますます沖縄紙批判は盛り上がる。

「沖縄紙が沖縄県民を洗脳している」「沖縄紙によって県民世論がコントロールされている」

 こうした”物語”もつくられていく。

 沖縄県で発行される『琉球新報』『沖縄タイムス』の県内シェアが約97%と、非常に高い数値であることは事実だ。もちろん、有力全国紙が沖縄に印刷拠点を持っていないこと、「県版」紙面がないことを考えれば当然ともいえるが、しかし、それだけで、この2紙が読者をつなぎとめられるわけでもない。

 地元紙とはいえ商業紙である以上、読者の支持を失えば、それで終わりだ。

「新聞が読者を”洗脳”できるのでれば、それこそ全国的な新聞離れだって食い止めることができるでしょう。まったくバカバカしい言説ですよ。そもそも県民が新聞に左右されているのだという指摘じたい、沖縄県民をバカにしています」(前出の記者)

 戦後、沖縄では数多くの新聞が生まれ、そして消えていった。なかには「保守」であることを明確に打ち出し、「反新報・タイムス」のスローガンを掲げて市場に参入した新聞もあった。そして熾烈な競争のなかで生き残ったのが『琉球新報』と『沖縄タイムス』だった。

 沖縄の新聞マーケットにおいて、両紙だけに「県紙」の指定席が与えられてきたわけではないのだ。新聞を生かすも殺すも、すべては読者の選択次第である。その結果が、市場へ反映されているに過ぎない。

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