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【無料記事】沖縄に関する「デマ」の真相 3〜 TOKYO MX『ニュース女子』が撒き散らす沖縄、在日ヘイトのフェイク・ニュース

高江や辺野古を襲う右翼とネトウヨ

 井上氏が”立ちレポ”した、同じ場所を訪ねた。
 名護市内の「二見杉田トンネル」。井上氏ら番組スタッフは、この手前で車を降り、ヘリバッド建設反対派の「過激デモ」を理由に「ここから先は危険」と、高江取材を断念。「わざわざ羽田から飛んできたのに、このトンネル手前で足止めを食らった」と悔しそうな表情を見せ、カメラはトンネル入口を映しながら、その先に暴力渦巻く闇があるかのような演出をした。「わざわざ飛んできた」のならば躊躇することなく現場に向かえよ、と言いたくもなるが、問題はそれだけではない。
 実は、トンネルを抜けても、高江にはまだ遠い。
 井上氏が「足止め」されたと嘆く二見杉田トンネルから高江まで、実際に車を走らせてみた。
 所要時間は約50分。走行距離は45キロだった。東京駅を起点とすれば、西は八王子、東は千葉までの距離に相当する。都心で起きた事件を千葉で”立ちレポ”する記者などいない。それでも同番組にかかれば「現場取材」となるのだ。情けない。要は井上氏いうところの「反対派連中」の”暴力性”を、具体的な根拠も示すことなく印象付けているとしか思えない。
 いったい、これのどこが「ニュースショー」なのか。運動参加者の顔にモザイクをかけた映像を何度も流し「テロリスト」呼ばわりしてはやし立てる構成は、素人のツイキャスと同レベルである。

 新基地建設の現場である辺野古(名護市)でも、移動する車の中から窓越しに反対派が設置したテントを眺め、「うわあ、なんだなんだ!」と嘆声を上げて素通りするだけだった。なぜ、車から降りてカメラを回さないのか。人々の話を聞かないのか。おそらく井上氏は、基礎的な取材の訓練などなにも受けてこなかったのだろう。移動する車の窓越しに現場を「見学」することが取材だと理解しているに違いない。
 突っ込みどころは満載だ。北部訓練場返還や機動隊員による「土人発言」のあった日を間違えているなど、ファクト・チェックもまるでできていない。
 番組では「どこのメディアも現地には入れない」などとコメントがついたが、実際は基地建設反対派に懐疑的、批判的なメディアも含め、多くのメディアが現場を訪ねている。これまで報道関係者がひとりでも反対派の「暴力」でねじ伏せられたことなどあるのか。

 辺野古に押し寄せた日本第一党(中央は日本第一党党首の桜井誠元在特会会長)

 それどころか、高江でも辺野古でも、右翼やネトウヨ集団による”来襲”は珍しくない。
 1月16日には在特会の桜井誠元会長が党首を務める日本第一党員ら約30名が辺野古に押し寄せ、反対派市民らに罵声を浴びせるなどの示威行動をおこなった。
「くさい!」「きたない!」「じじい!」
 一行は時に反対派市民が座り込むテントの中にも入り込み、罵声を飛ばした。やりたい放題である。私の姿を見つけて執拗にカメラを向けながら「風俗ライター!」などとはやし立てるのは一向にかまわない。だが、無抵抗で座り込む高齢の市民に悪罵をぶつける態度には「保守」の片鱗も見ることはできなかった。そして彼らもまた「金で集められた連中」などと、ヨタを飛ばしては手を叩いてはしゃぎまわるのであった。
 『ニュース女子』もネトウヨも、ネットでかき集めたデマを援用している点で変わらない。
 番組のもっともも悪質な点は、こうしたデマの流布に努めたことであろう。

辺野古の反対派テントの中に押し入った桜井誠・日本第一党党首

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