「ノンフィクションの筆圧」安田浩一ウェブマガジン

武器とするのは「米国からもらった民主主義」と「日本国憲法」 山根安昇さんを悼む

 圧力に抗う沖縄が持つ2つの「武器」

 琉球新報元副社長の山根安昇(やまね・あんしょう)さんが3月末に亡くなった。享年77。先日、シンポジウム出席のため沖縄を訪ねた際、地元の記者たちと飲みながら山根さんのことが話題になった。若い記者たちに刺激を与え続けた人だった。
 からだも声も足音もデカくて、いつも”熱量”を感じさせた。新聞社を離れても、記者であり続けた。発言することをやめなかった。
「沖縄の新聞はつぶさないといけない」──作家・百田尚樹氏の発言をきっかけに各所から”偏向批判”なるヨタが投げられた際も、黙ってはいなかった。批判にさらされる記者たちを励ますのだと、OB仲間をかき集め、「沖縄のマスコミを支える会」を結成した。
 山根さんには拙著『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日新聞出版)の取材で何度もお世話になっている。
 忘れられない言葉がある。
 沖縄に対するあらゆる圧力と闘っていくと熱く語る山根さんに、「では、どうやって闘っていくのか」と私が問うた時だった。
 山根さんは「2つの武器がある」と話した。
 さらにこう続けた。
「ひとつは、米国からもらった民主主義。もうひとつは、日本国憲法。この2つの武器を高く掲げて沖縄は生きていく」
 日米両国に蹂躙され、裏切られ、差別されてきた。それが沖縄だ。しかし山根さんは米軍の占領下にも米国の民主主義を信じ、そして、日本国憲法を獲得できる日を望んだ。
 いま、民主主義も憲法も、煩わしい重荷のような扱いを受けている。
「ならば、もらってやる」。山根さんならば、そう言うに違いない。
 どんなに手垢にまみれてしまっていても、その内実まで腐らせてしまっていいわけがない。残された私たちは「武器」をきちんと使いこなすことができるだろうか。

 以下は、私が『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』のなかで山根さんに触れた部分だ(いくつかの部分を改稿した)。
 これをもって山根さんへの追悼としたい。

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