「ノンフィクションの筆圧」安田浩一ウェブマガジン

【詳報】「表現の不自由展・東京」延期発表記者会見 質疑で明かされた日本社会の課題

「表現​の不自由展」公式ページより

 

 6月25日から開催が予定されていた「表現の不自由展・東京」の延期が決まった。

 同展は当初、神楽坂(東京都新宿区)のイベント施設「セッションハウス」での開催が決まっていたが、右翼団体、ネトウヨが会場付近で嫌がらせや脅迫行為を繰り返したことにより、施設側が会場利用を拒否。主催者の「表現の不自由展・東京実行委員会」は今月10日に会見を開き、新会場を確保し、予定通り25日からの開催をすることを発表していた。

 ところが新たに決まった会場からも、「近隣へ迷惑がかかる」との理由で会場の貸し出しを拒否されたという。

 24日午前、同実行委員会は緊急の記者会見を開き、新会場が確保できるまで、開催を延期すると述べた。

 会見における主催者の発言、記者との問答は以下の通り。

(主催者側として出席したのは実行委員会の岡本有佳氏、岩崎貞明氏、そして弁護士の李春煕(リ・チュニ)氏の3人)

左より岩崎貞明氏、岡本有佳氏、李春煕弁護士

 

 岡本有佳氏(以下、岡本) 本日は「表現の不自由展・東京」の延期について説明させていただきます。冒頭に申し上げますが、あくまでも延期であって、開催できることは確信しております。

 「表現の不自由展・東京」は6月25日から開催予定でしたが、このたび延期することを決定しました。すでにご予約いただいているみなさまをはじめ、アーティストの方々など、各方面にご迷惑おかけしましたことをお詫びいたします。

 不自由展に関しましては当初の開催予定だった神楽坂「セッションハウス」への妨害行為が続いたために、6月10日の記者会見において、同会場での開催が断念したことをお伝えしました。

 そして新たな会場を探しましたが、実は同9日には新たな会場が見つかり、10日には会場側と貸し出しについて合意しました。そのときは本当に、暗闇の中に一筋の光を見たようにも思いました。実行委一同、みんな喜びました。アーティストの方も一緒に喜んでくれました。

 そのあと、あらためて会場が変わるということで、アーティストの方々ひとりひとりと連絡を取りながら、会場と合わせた展示プランを考えたり、警備体制や弁護士護士の打ち合わせを重ね、チラシも刷りなおしたりの作業を続けました。警察との打ち合わせも済ませたばかりです。

 そして17日に新たな会場が決まったことを予約いただいた方々に通知。翌日にはメディアにもリリースを送りました。同時に、新たな会場はまた攻撃を受けるかもしれないというリスクもありますので、会場名に関しては開幕ぎりぎりに発表させていただくことをお伝えしました。

 そしてプレスにリリースを出した直後、新たな会場のほうから、近隣への迷惑がかかるということを理由として、最終的に貸し出しができなくなった、という連絡があったんですね。

 もう本当に寝耳に水で、びっくりして、それまで大変な思いをして準備を進めてきたわけですから、急にそうしたことを言われて非常に困惑しました。

 でもなんとかお願いできないものかと交渉を続けたが、結局、結論が覆らない、ということが確認されてしまい、その結果、新しい会場での開催を断念せざるをえなくなりました。もちろんさらなる新しい会場、代替え会場を探しましたが、すでに予定されていた開幕まで数日という段階で、まず会場探しが困難。そしてなによりも私たちは美術展をやりたいわけです。美術展は展示プランが命です。それをまた、組み換えしないとならない。一度、全部組み直してきたのに、また変更しなければならないのです。それをアーティストにもお伝えしなければなりません。とても数日では不可能。断念せざるを得ませんでした。

 本当に、本当に残念なんですけど、冒頭でお伝えした通り、会期を延期せざるを得なくなってしまったけれど、またこれから新しい会場を探して、必ず開催できるということを私たちは確信していることを申し上げたいと思います。

 会場名の公表に関しては、実行委員会の中でも議論しました。実は「セッションハウス」も10日の会見(会場変更の発表)以降も攻撃が続いていました。かなり執拗に攻撃が来ているということで、会場名の公表によってまたさらなる攻撃が生まれることを私たちは心配して、本日も非公表とさせていただきます。ご了承くださいますようお願い申し上げます。

 これまで私たちは「セッションハウス」を守ってきました。同時に新会場での準備も進めてきたのですが、この間、実行委員会にも攻撃のメールが届いています。そのなかには犯罪に値する内容のメールもあります。それに関しては、いま、対応を検討しています。

 今後もアーティストの皆さんとのコミュニケーションをとりながら、新しい会場の設定を目指します。会場を確保し、開催のめどが立った時点で、またお知らせしたいと考えています。

 鑑賞チケットお持ちの方にもお伝えし、返金も受け付けます。

 返金を望まない方に関しては、新会場と日程が決まった段階で、優先的に連絡を差し上げます。

 この度はわたしたちの力不足によってこうした事態となったこと、重ねてお詫び申し上げます。

<記者との質疑>

 ──実行委員会を攻撃するメールの内容を教えてほしい。名古屋、大阪でも開催が予定されているが、現状は。

 李春煕氏(以下、李) メールに関しては今後の捜査との関係もあるので具体的にはご紹介できないのですが、明らかに犯罪、特に脅迫であるとか、威力業務妨害に該当するようなものであるとか、実行委員の生命、身体を脅かすようなものがある。これに関しては対応を検討します。

 岡本 名古屋と大阪が東京と違うのは、公共の施設でおこなわれるということ。私たち東京展は個人所有の会場を設定して進めてきました。それは長年の関係、信頼があったからでした。そうしたことから、個人所有の会場で開催する予定でした。

 名古屋と大阪も会場探しにはものすごく苦労されたと聞いています。また、「セッションハウス」が右翼の攻撃にあって以来、緊張も強まりました。どうかそのあたり、名古屋と大阪にも取材してください。

──新たに決まった会場が断ってきた理由は? このままでは山奥の一軒家でしか開催できなくなるのでは。

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