「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

次の公式戦まで短いブレイクを挟み、各代表選手はそれぞれ遠征に経つ。一方でオリヴィエ・ブマルや大津祐樹が加わり、ポジション争いは激化するだろう [J4節浦和戦レビュー]

 

 浦和レッズは従来の4-1-4-1から4-4-2にシステム変更してきた。ボールサイドと反対のサイドハーフはインサイド寄りにポジションを取り、マリノスのボランチとサイドバックを両方見るような形を取ってきた。開幕から2分1敗と勝てていないチームゆえに、割り切って自分たちの形を変えられたのかもしれない。

対して、マリノスは水曜日のベガルタ仙台戦に続いてダブルボランチを採用。すると扇原貴宏が持ち前の展開力を取り戻した。左右の対角線に躊躇することなくロングボールを送り、33分には相手最終ラインの背後を取ったユン・イルロクへ決定的なラストパス。ユンが頭でつないだボールをウーゴ・ヴィエイラが決めていればパーフェクトな流れだった。

アンジェ・ポステコグルー監督はショートパスに固執しているわけではなく、局面によっては長いボールを活用することも認めている。ただ難しい体勢で、通る見込みの低いロングボールやロングシュートを嫌う傾向にあるというだけ。喜田拓也の負傷によって2試合連続で先発した扇原は、ようやく及第点以上のパフォーマンスを見せた。

互いにここまで未勝利という事実が肝心な場面での精度を奪った側面もあるかもしれない。チャンスを仕留める力が両チームともに欠けていた。後半に入り、マリノスは59分にセットプレーのこぼれ球を拾った山中亮輔からウーゴ・ヴィエイラとつないで決定機を迎えたがGK西川周作に阻まれる。直後の60分にもセットプレー崩れから再びウーゴ・ヴィエイラがチャンスを迎えたが、シュートは西川と柏木陽介のダブルブロックに弾かれた。

前半から通算した3回の決定機を決められないウーゴ・ヴィエイラ。しかし我々は彼が根っからのストライカーであることをポステコグルー以上に知っている。それまでのチャンスに比べれば難易度が高いように見える、動き直し&トラップ&シュートだが、追い込まれた土壇場だからこそ血が騒ぐ。応対したのが守備選手ではない興梠慎三という幸運はあったものの、簡単ではないゴールを決めてマリノスに勝ち点3をもたらした。

 

 

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 この勝利でより自信が深まり、チームがさらに前進する。どれだけ内容にこだわっていても、選手は白星がないことを気にしていた。「まずは1勝できてホッとした」(松原健)、「みんな勝ちに飢えていた」(扇原貴宏)。主将の中澤佑二も「ルヴァンカップでは勝っているけどリーグ戦では1勝するのに苦しんでいて、こうやって勝つことでもう一つ上のパフォーマンスを目指していける。この1勝をしっかりときっかけにしていきたい」と価値を口にした。

選手たちの自主性や判断力の向上も見逃せない。前半途中、守備が機能していないことを感じた天野純は扇原と話し合い、自らの判断でダビド・バブンスキーとポジションを入れ替えた。これによって守備が安定し、バブンスキーが持つクリエイティブな能力が高い位置で生きた。予想よりもプレッシャーをかけてこないこの日のような相手ならば、バブンスキーは本来の持ち場であるトップ下のほうが生きる。

昨今、話題に挙がっている両サイドバックのポジショニングにも絶対的な縛りはない。マリノスがダブルボランチを採用し、さらに相手が中を閉めてくるような守備をしてきた場合、松原はあえて通常のポジショニングでボールを引き出していた。「少し開いたらうまくボールが回ったので、ハーフタイムにヤマ(山中)にもそれを伝えた。自分たちで考えてプレーすることに監督は何も言わないし、自分たちの判断も大事にしていきたい」(松原)。始動から約2ヵ月が経過し、指揮官は一つの基準点を作っている最中という考え方がおそらく正しい。

次の公式戦まで短いブレイクを挟み、各代表選手はそれぞれ遠征に経つ。一方でオリヴィエ・ブマルや大津祐樹が加わり、ポジション争いは激化するだろう。開幕から2試合出色のパフォーマンスを見せていた喜田の存在も忘れてはいけない。メンバーが出揃う中で、指揮官の要求はこれからも少しずつ変わっていくはず。それに素早くアジャストし、チャレンジする姿勢を保った選手が清水エスパルス戦のピッチに立つ。

開幕からの公式戦6試合は新しいマリノスの序章に過ぎない。浦和戦で勝ち取ったリーグ戦初勝利は、新しいチームのさらなる活力になるとともに、次段階へ歩を進める号砲となる。

 

 

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