【榎本哲也ロングインタビュー2】 「やっさん(樋口靖洋監督)が監督になってからは自分が試合に出なくても勝ってほしいと強く思った」(2,077文字)
SPECIAL INTERVIEW(2) /GK 1 榎本 哲也
――ここからは昨シーズンの話を聞かせてほしい。第26節の鹿島アントラーズ戦が約2年10ヵ月ぶりの先発出場となったけど、試合に出られない時間は長く感じた?
「試合に出ているときは試合後のコメントだったり、いろいろなところに名前が出るからね。でも試合に出ないと自分の言葉がどこにも載らない。そういう意味でもサッカー選手として一番つらい状況で、どうしていいのかも分からなかった。練習をたくさんやって気を紛らわせようとしても、なかなか内容が伴わない」
――どんな気持ちで練習に取り組んでいた?
「試合に出られなくなったのは出ているときの自分に責任があったから。ポジションを奪われたら、奪い返そうという気持ちになるのは当然。でもどうやったらいいのか分からない。とりあえず練習量を増やすことくらいしか思いつかなくて…。でも練習量と気持ちが一致しない。練習したその日は良くても、次の日には結局のところ疲労感しか残っていない。気持ちの余裕もなくて、どうしていいのかさっぱり分からない」
――練習試合で試合勘を維持するという考え方もあると思う。
「Jリーグと練習試合が同じ90分間かと言えば、絶対に違う。お客さんの人数によって雰囲気はまったく異なるし、そもそもグラウンドが違う。単純にスポンサーの看板があるだけでグラウンドは狭く感じたりするものだから。練習試合に出たから試合勘を保てるかといったらそうではない。でもそれは個々の意識の問題だと思う。GKだったら縦の感覚だけでも合わせるとか、取り組み方次第だよね」
――では練習試合がモチベーションを保つ理由にはならない?
「それは、難しいね。でもそこしかアピールの場所がないから、無理矢理にでも気持ちを高めていた。でも無失点に抑えても充実感を得るのは難しい」
――いいプレーをしたときの手ごたえもない?
「あんまり…。でも、それを続けていくことに意味があると思って取り組んでいた。今回の練習試合も前回と同じように安定してできたな、って思うくらい。練習試合で突き詰めてしまうと気持ちのコントロールは逆に難しくなる。反省するのは本番に出てからで十分だから」
――サッカー選手として一番つらかった時期?
「つらかったかな。あとは試合に出られなくなってから、けがが多くなったのもある。たぶん無理してサッカーをやっていたんだろうね。コンディションがあんまり良くない状態でも無理してやっていたと思う。無理して何か残るわけではないのに、余裕がないから頑張ってしまう。それで負傷する。最初に左足のふくらはぎを肉離れして、足首を何度もねん挫して、これまであまりなかった膝のけがもあった。最後は去年のキャンプで右足のふくらはぎを肉離れした。本当に最悪だよね(苦笑)。そういった過去があったから今があるんだろうけど、深く考えるとオレは何をしてたのかなぁっ、て」
――やっぱり思い出したくない時間になる?
「いや、そういうわけではないよ。繰り返しになるけど、そのときがあったから今があると思っている。悔しい気持ちは残っているけど、なんで試合に出られるようになったかというと、監督が使ってくれたから。あとはもちろん運もある」
――GKはたった一つしかポジションがないから難しい。
「だからGKコーチがいるんだろうね。GKのことはGKコーチにしか分からない。メンタル的な部分がすごく大きいポジションだから、そういうところで理解してもらえる人が必要なんだと思う。フィールドプレーヤーには絶対に分からない感覚だと思う」
――榎本哲也にとって松永成立という存在は?
「シゲさん(松永GKコーチ)はオレがGKを始めるきっかけになった
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