「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

マルキがいない中でどれだけ攻撃の形を作れるか [ナビスコカップ甲府戦・直前プレビュー] (藤井雅彦)

良いことばかりが続くわけではない。Jリーグ開幕から先日の川崎フロンターレ戦まで公式戦4連勝。これ以上ない滑り出しを見せ、さらに来季の獲得を目指している専修大3年(新4年)の長澤和輝を特別指定選手として受け入れることが決まった。頬が緩むような出来事が続いたあとに、思わぬ落とし穴が待っていた。

21日、フロンターレ戦で退場処分となったマルキーニョスに公式戦2試合の出場停止が課せられた。明日のナビスコカップ第2節・ヴァンフォーレ甲府戦、そして来週末のリーグ第4節・FC東京戦の2試合が対象となる。甲府戦に出られないまでは織り込みずみで、マルキーニョスを休ませる貴重なタイミングで、新戦力を試す絶好の機会でもあった。それだけならば大事ではなかった。

だが、リーグ戦にも影響が出るとなら話は別だ。ここまでリーグ戦3試合で5得点、公式戦4試合で6得点と得点能力の高さを見せつけているストライカーを欠くのがどれだけ痛手か。チーム内に与える影響も少なくないが、それ以上に対戦相手に与える脅威が半減してしまう。FC東京関係者はほくそ笑んでいることだろう。

非常に残念な事態となったが、気持ちを切り替えなければいけない。まずは明日に控えるナビスコカップ第2節でしっかり勝ち点3を奪い、次のリーグ戦に流れをつなげたい。ポジティブに捉えるならば、いずれもマルキーニョスが出場停止という共通点がある。甲府戦はただのカップ戦の1試合ではなく、FC東京戦につながる大きな意味を持つのだ。

「リーグ戦に向けたトライになる。マルキがいない中でどれだけ攻撃の形を作れるか。逆に甲府戦はいい機会。チーム力を上げる機会にしないといけない」

 樋口靖洋監督はこのように甲府戦を位置付けた。長いシーズンのどこかで、マルキーニョスがアクシデントによって欠場するのは容易に想像できたこと。今回のそれは負傷ではなく、あくまでペルナティなのだから期間も明確に分かっている。前線の核を欠いたマリノスがどれだけ力を保てるのかを判断する場にしなければいけない。

となれば注目はマルキーニョスの代わりに1トップに入るであろう藤田祥史となる。ジェフユナイテッド千葉から加入した今季は公式戦全試合でベンチスタートに甘んじているが、試合途中から攻撃的に出る際の貴重な選択肢となっていた。開幕戦の湘南ベルマーレ戦ではマルキーニョスと2トップを組み、先日のフロンターレ戦ではマルキーニョス、齋藤学とともに3トップを形成した。形式はどうあれ得点がほしい場面の有効なカードであり、いずれの試合も藤田投入後にゴールが生まれているのは決して偶然ではない。藤田自身はゴールしていないものの、クロスに対してゴールに飛び込むことで間接的に関与しているからだ。

あとはスタートから出番を得たときにどのようなパフォーマンスを見せるか。宮崎キャンプ中は1トップとしてなかなかボールが収まらず、周囲との連係を構築できなかった。だが、開幕前後から本来のパフォーマンスを取り戻しつつあり、1トップでも及第点以上の動きを見せるようになっている。とはいえ、もともと前線で抜群のボールの収まりを見せるタイプではなく、動きながら起点を作るタイプである。いまのマリノスのチーム構成において1トップが適任とは言い切れない。

それよりも期待したいのはゴール前での仕事だ。「横からのボールに強い」(樋口監督)という特徴は貴重なオプションとなる。滞空時間の長いクロスではなく、ニアサイドへの鋭いボールで力を発揮するだろう。齋藤がサイドを切り崩し、そこからの折り返しをニアサイドの藤田がワンタッチで決める。こんな展開が理想だ。

また代役という点では右SBに天野貴史が入るかもしれない。レギュラー右SBの小林祐三はフロンターレ戦で右足首をねん挫しており、重傷ではないものの万全でもない。前日の練習では主力組の右SBは小林と天野が交互に務めている状態で、樋口監督も頭を悩ませているようだった。対戦相手の状況も見ながらの判断となるだろう。

その甲府についてだが、同じ昇格組でも湘南よりも実力上位と見るべきか。昨シーズンの得点源であるダヴィ(現・鹿島アントラーズ)の移籍によって最終局面での決定打こそ欠くものの、悪いチームではない。「甲府はここまで公式戦2分2敗で勝っていないけどすごくいいサッカーをしている。最後のところで決め手を欠いているだけ」と敬意を払ったのは中村俊輔である。マルキーニョス不在でマリノスも決定力を欠くことを想定しなければならず、スコアレスで時間だけが過ぎていく展開もありえる。フロンターレ戦のように終盤までゲームが動かない可能性も十分あるだろう。

そういった中で選手たちが展開や状況に応じたプレーをどれだけ見せられるか。そして交代カードが一枚少ない状態で臨むゲームで、樋口監督がどのようなマネジメントを見せるか。マルキーニョスの出場停止によって万全の状態ではないからこそ、普段以上の応用力を問われるゲームとなる。

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