「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「蹴った瞬間に入ると思った。狙い通り」 進化する背番号14 天野純は決定的な仕事をやってのけた [J11節 鹿島戦レビュー]

 

前節からの先発変更は4選手。右サイドバックに山田康太が入り、リーグ戦での初先発となった。ボランチは4試合ぶりに中町公祐が先発して天野純とコンビを組み、トップ下には伊藤翔が起用された。伊藤はウーゴ・ヴィエイラと縦関係を形成し、孤立させないポジショニングを取る。そして右ウイングには仲川輝人ではなく遠藤渓太が入った。

 7分、左サイドで得意のコンビネーションからボールを受けたユン・イルロクがペナルティエリア内へのパスを選択。走り込んだ天野純が左足を振り抜くと、シュートは相手DFに当たってコースが変わり、これを遠藤が身体を投げ出して頭に当ててゴールネットを揺らした。

中町とコンビを組んだ天野は、GK飯倉大樹や最終ラインからボールをピックアップする作業を行い。攻めては相手ゴール前まで幅広く動いた。その光景自体はこれまでとあまり変わらないものだが、鹿島アントラーズ戦ではペナルティエリアの横幅でプレーすることを意識した。コーナーフラッグ付近まで流れてクロスを送る形を減らし、ゴールに直結する位置を取る工夫が先制点を呼び込んだ。

進化する背番号14は自身も決定的な仕事をやってのける。前節のコンサドーレ札幌戦と同じような位置で得た直接FKを、今度はGKが触れないコースに蹴り込み、ポストに当たってゴール。「蹴った瞬間に入ると思った。狙い通り」と自画自賛の完璧なFKで貴重な追加点をもたらした。

最近喫した3つの黒星はいずれも逆転負けだったため、どうしても不安が脳裏をよぎる。だがその3試合と違うのはリードが2点だったこと。ビハインドの相手はより前傾姿勢を強め、そして鹿島アントラーズのプレスは想像通りに強烈だった。中町が「相手のボランチ二人がウチのボランチに対してプレッシャーをかけてきて、その圧力が他のチームよりも強くてなかなか良い形でボールを回せなかった」と述懐したとおりである。

2点のリードを奪ってからは、自陣でのボールの失い方が悪く何度もピンチを招いた。中町や山田や伊藤が危険な奪われ方をすると、そのままの勢いでフィニッシュに持ち込まれそうになった。ここで失点していたら最近の流れの悪さから気落ちし、自信を失っていたことだろう。だがしかし、今日のマリノスは一味もふた味も違い、勝利に貪欲だった。

 

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マリノスのアイデンティティである守備意識の高さが復活。その象徴である中澤佑二は「技術的な部分でパスをつなぐことやポゼッションというチームの理想はあるけど、それ以外でも球際のところや90分間身体を張るといったことができた表れがこの結果だと思う。今日はチームが勝つためにみんながプレーした。ブサイクでどんな格好でもいい」。それはルーキーの山田にも伝播し、伝統がしっかりと受け継がれた。後半は相手に主導権を握られながらも、高い位置でのボール奪取から手数をかけない攻撃がダメ押しの3点目となり、勝ち点3を手にした。

相手を圧倒するパフォーマンスではなく、泥臭くガムシャラな姿勢が光った。だからといって理想とするスタイル追求をあきらめたわけではない。あくまで今の状況とこの試合の展開が、マリノスを原点回帰させただけ。2点ビハインドの相手が高い位置からプレッシャーをかけてくるのならば、それを回避するためにロングボールを使えば効果を得られる。これまでの10試合はあまりにも単調で、シチュエーションにかかわらずボールポゼッションに固執する部分が大きかった。

「いいサッカーをしているだけで終わってはいけない。内容が良くて結果が出るのはいいけど、結果は求めなければ出ないもの」と中町が胸を張れば、中澤は「勝つためのポゼッションだと思うし、今日はチームが勝つためにみんながプレーした。ブサイクでどんな格好でもいい。その中で目指すサッカーにチャレンジすればいい」と前を向く。この日のマリノスは内容が素晴らしかったわけではない。最近は内容以上に負け方が悪かったとすれば、鹿島戦は勝ち方が素晴らしかった。

 

 


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