【サッカー人気3位】「立て続けの主力の移籍を選手はどう感じ…

「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

FC東京は隙を見せつつ勝てるような相手ではない [試合直前プレビュー J4節・FC東京戦] (藤井雅彦)

開幕からの公式戦5連勝は立派だ。対戦相手の出来が総じて良くなかったことを差し引いても、1点差勝負も含むすべてのゲームを勝ちきったのは素晴らしい。齋藤学は「圧倒したゲームはそこまで多くない。でも接戦を勝ち切っているのは大きい。去年だったら負けや引き分けの試合もあった」と自分たちの成長を感じ取っていた。予想以上のポテンシャルが目覚めたわけではなく、計算していたクオリティをきっちり発揮した結果が首位である。

したがって恐れるべきは知らずしらずに隙を見せ、相手にチャンスを与えることだ。持っている力を出せなくなった途端、結果は正反対になる可能性だってある。圧倒的に強いチームではないのだから、ほんの少しの油断や慢心、あるいは勘違いが命取りとなろう。白星が並んでいるからこそ細心の注意を払って次なる戦いに臨まなければならない。

迎えるFC東京との一戦に向けて、樋口監督のマネジメントに注目したい。監督のマネジメントは試合前までの練習内容や対戦相手のスカウティングなど多岐に渡るが、最も重要なのは選手のモチベーションを上げる、あるいは高い水準で保つことだ。試合中に起きるアクシデントはさまざまでも、まずは心身ともに充実した選手を11人並べることが勝利への近道と断言できる。

その点で樋口監督が今回選ぶであろう11人が最良の選択なのかに疑問符が付く。本稿での予想フォーメーションは筆者の主観ではなく、あくまで取材に基づく予想だ。そこには右SBに天野貴史、そして右MFには佐藤優平の名前がいる。前者は長期離脱を経ての久々のリーグ戦先発で、後者はプロ入り初先発となる。いずれも先発と断言するわけではないが、少なくとも木曜日の紅白戦では主力組を担っていた。スタメンの可能性が高いのは間違いない。

天野の良さは本人が「攻撃で持ち味を出したい」と話すとおりである。体格的なハンディキャップを感じさせない勇猛果敢なオーバーラップから鋭いアーリークロスを送る。マルキーニョスの出場停止によって1トップに入るであろう藤田祥史との相性も良いはずだ。攻勢の展開になれば、同じポジションの小林祐三と比較したときに、より攻撃のオプションになり得る存在だろう。

同じことは右MFで先発濃厚の佐藤にも当てはまる。樋口監督は「彼の機動力を生かしたい」と起用の狙いを話しており、前後左右に幅広く動く特性はチーム戦術にもフィットする。本来はボランチのプレーヤーでも、キャンプから2列目での起用が多く、攻撃面に関しては齋藤学や端戸仁とは異なる持ち味を出してくれるはずだ。主力と控えの格差を小さくするためにも彼のような存在が出てくるのは喜ばしい限りである。

しかしながら、置かれている状況や対戦相手を鑑みたときにこの判断は果たして正しいと言えるのだろうか。5連勝はいずれも樋口監督らしく堅実な采配で勝ち取ってきたものだ。堅実とはつまり不確定要素を取り除き、計算できるスタメン編成と選手交代だ。そのすべてが正しかったとは思わないが、結果を出してきたことに変わりはない。ここで新しい試みにチャレンジするのは指揮官らしくないし、賢明な判断とも思えない。勝ち点3を掴み取るために、周囲に何を言われようがこれまでのスタイルを突き通すべきなのだ。それは戦術もそうだが、まずは先発メンバーである。

齋藤は先日のナビスコカップ第2節・ヴァンフォーレ甲府戦の途中に右でん部に違和感を訴え、コンディションが万全ではない。筋肉系の負傷につながるリスクもあるため無理をさせるわけにはいかない。ベンチスタートの判断は妥当だ。そこで代役の筆頭候補は端戸かと思いきや、樋口監督は佐藤を初先発させる可能性が高い。それについて「この前の練習試合を見ていると正直、優平のほうが機動力を出せていた。仁が悪いわけではなくて、いまはサイドではなく真ん中で使ってあげたほうが生きる」と決断に至った理由を明かす。

見方そのものに異論はない。だが、同時に佐藤をいきなり右MFで先発させるリスクを考えなければならない。練習試合で出せていたクオリティを初先発のリーグ戦で本当に発揮できるのか。その勝算はあるのか。まず過緊張に陥る可能性があり、対戦相手に押し込まれ、守備に奔走するかもしれない。それでも佐藤を起用する価値があるのか。勝算が樋口監督の頭の中にあるのならば堂々と起用すべきだ。ただしその場合は当然、起用責任を問われることになる。

佐藤が主力組に混ざってプレーしたのは今週に入ってからがほとんど初めてで、連係もままならない。さらに後方に控えるのがこれまで主力としてプレーしてきた小林ではなく天野になる可能性がある。守備に特徴を持つ選手から攻撃に色のある選手へとスイッチすることで佐藤の守備負担は大きくなる。小林の負傷はプレーする上で問題ない状態に回復している。なんのために甲府戦を欠場させたのか。この一戦に万全の状態で臨むためではなかったのか。

勝敗を分けるのはほんの些細なことだ。そして好調のFC東京は隙を見せつつ勝てるような弱い相手ではない。樋口監督の不可解な采配で勝ち点を落とすことになれば、ここまでの連勝で積み上げてきた自信や勢いは、脆くも崩れ去ることになるだろう。

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